京都には深い井戸が幾つもある by 小林禎弘

第35回 京都の奥で寛ぐ、本格的な農村体験ができる農家民宿 前編(京都市)

農家民宿というものをご存じでしょうか?農業体験ができる民宿というくらいの認識じゃないでしょうか?私はそう思っておりましたが、実は行政上明確な決まりがあります。「農家民宿とは、旅館業法上の営業許可を取得した『農林漁業体験民宿業を営む施設』のことをいいます。」と京都市情報館に記されています。似た内容を全国の行政が定めています。

旅館業法のハードルを下げて、まるで田舎の家に帰ってきた感覚で、地元の暮らしや食を体験できるのが特徴です。体験メニューなどが多く用意されています。今回は久多(くた)の農家民宿を紹介します。

久多と言われてもピンとくる人は京都でもあまりいません。場所は、鞍馬の奥の奥にあります。左京区の最北にある住人80人のまるで隠れ里です。しかし面積は左京区の半分を占めます。京都市内からの楽な行き方は、大原から途中を越えて安曇川沿い(つまり鯖街道)を走り左折です。ちなみに国際会議場からタクシーで9000円かかります。自家用車で市内から1時間です。

茅葺き民家治良吉オーナーの常本治さん。
収入が主眼でなく、久多の暮らしと自然を味わってほしいと話されています。

室町時代から40年前まで林業で栄えたので、多くの古刹や伝統行事を支えてきました。8月23日の松上げ、8月24日の夜更けから深夜まで行われる久多花笠踊りはユネスコ無形文化遺産の風流踊の一つに選ばれています。

造花で飾られた灯篭の見事さには驚かされます。集落の文化度の高さと川の透明度などの豊かな自然を感じずにはおられません。市内から芸術家が移住してきているのもうなずけます。

久多花笠踊の灯篭。これはミニチュアサイズ

久多花笠踊の灯篭を飾った実物の造花

久多には6軒の農家民宿のうち3軒がコロナ禍で休業しています。営業している1件目は、茅葺き民家治良吉(じろきち)です。ご主人の常本治さんは、久多農家民宿協議会代表をされています。この地区で唯一茅葺の母屋に泊まれます。北山友禅菊という薄紫色の可憐な菊を、平成8年から60aの畑に栽培して地域の特産物に育て上げました。7月~8月には花の摘み取り体験ができます。

茅葺の母屋全景。ここに宿泊、前の緑は友禅菊畑

京地鶏とブリモース種の2種を飼育されていて、とれたての卵や肉が出されます。また日本ミツバチの養蜂もされていて、朝食に出されることもあります。1泊2食9000円(税込み)。予約は電話のみで、090-7757-6123 数ある体験メニューも聞いてみてください。

左:飼育されているブリモース種。甘みがあり美味い! 生でもいけるそう 
右:ミツバチの飼育箱の整備。日本ミツバチの養蜂が難しい

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