トコトコ東北 by 川崎久子

第26回 鳴子峡で紅葉狩り!江戸時代発祥の地元の伝統工芸も注目(宮城県・大崎市)

宮城県の北西部、山形県との県境近くにある鳴子峡は、県内屈指の紅葉の名所。2.5kmにわたって高さ100mにもおよぶ断崖絶壁が続き、白灰色の崖を覆い尽くすようにモミジやカエデ、ミズナラなどが生い茂っています。紅葉の時季、木々が赤や黄色に染まる様は、圧巻の美しさです。

鳴子峡の紅葉は例年10月下旬〜11月上旬にかけて見頃を迎えます
(写真提供:宮城県観光プロモーション推進室)

鳴子峡へは車で苦労なく足を運ぶことができます。しかし、かの松尾芭蕉が「おくのほそ道」の旅をしていた藩政時代は、鳴子を経て出羽へ至る峠道は軍事上の要衝だったため、沢に橋がかけられていなかったとか。旅人にとっては難所中の難所として知られていました。芭蕉は鳴子の手前に位置する岩出山を出発し出羽へ向かうのですが、途中の尿前(しとまえ)の関で通行手形を持っていなかったことから厳しい取り調べを受け、通過にひと苦労。やっと許された後はそのまま出羽へと向かったそうです。いい湯が湧く鳴子温泉郷でひと風呂浴びることなく通過してしまうなんて、なんだかもったいない!ですね。

さて、鳴子温泉郷の伝統工芸品といえば鳴子こけしが真っ先に思い浮かびますが、鳴子漆器もまた、地域が誇る伝統工芸品です。その誕生は寛永年間(1624〜1643年)頃といわれ、岩出山伊達家3代当主伊達弾正敏親(1652-1721年)が京都にて塗師と蒔絵師を修行させ、振興の後押しをしました。のどかな田園風景の中に立つ鳴子漆器の工房兼ギャラリー「佐藤漆工房 ギャラリー漆木舎(うるしごや)」では、その魅力に触れることができます。

工房までは陸羽東線中山平温泉駅から車で10分ほど

お弁当箱は文箱としても利用できそう!
鳴子漆器は18世紀後半の文献にも登場するほど、
鳴子の主要産物として認知されていたのだそう

器や重箱、酒器など、さまざまな作品がある中でイチオシは、「竹ストロー」。竹と漆という、天然素材で作られるストローはシンプルな見た目ですが、下地作りや塗り、研ぎ、乾燥など多くの工程を経て完成します。近年、プラスチックのストローの代わりに紙のストローが使用されるようになりましたが、紙製は口にした時に違和感があるように感じていました。この漆塗りの竹ストローはなめらかな肌ざわりで、口当たりも良好。耐久性に優れているので、“マイストロー”におすすめですよ。

工房オリジナルの竹ストロー。一つひとつ形が異なるのは天然ならではの魅力

Tag

このページをSHAREする

最新記事一覧へ