麗しきバリの伝統を伝え、笑顔でお迎え
VOL.29 Yunik(I Gusti Ayu Rusmala Dewi)さん 1994年生まれ、31歳 星のやバリ

「星のや」ブランドの海外第1号として2017年に誕生した星のやバリ。記事はこちら。
熱帯の樹々が生い茂るウブドの奥に佇みます。開業メンバーのひとりであるYunikさんはバリ舞踊の名手でもありました。
―――星のやバリで働くようになったきっかけを教えてください。
私の実家のすぐ近くに星のやバリが開業すると知り、とても嬉しかったです。私は観光系の専門高校に通い、美容サロンやレストランで働き、その後旅行会社で3年半ほど予約やチケット手配などを担当していました。これまでもゲストと交流し、お互いの文化を学んだりすることを本当に楽しんできました。ですから、星のやバリの開業スタッフとして働きたいと、願い出ました。
星のやバリの私の第一印象は、カフェ・ガゼボの素晴らしさです。深く感銘を受け、ここでゲストがどれほど快適な時間を過ごすだろうと想像しました。他の建築物も、バリ風と日本風のデザインが融合し、非常に美しいと感じました。
次に印象的だったのは、開業準備の際に、新しいスタッフ全員が会議室でオリエンテーションに参加した時です。オリエンテーションでは、先輩・後輩の区別なく、チームとして協力することを奨励されました。それが最も記憶に残っている瞬間です。またオリエンテーションの後、最初は散らばっていたスリッパがきちんと整頓されているのを見て驚きました。これが日本の文化であり、本当に素晴らしく、細部への気配りは私が目指すべきことだと思いました。
―――お仕事の内容を教えてください。
当初は会計部門で働きました。購買チームからの発注書の照合や受領、商品の確認、サプライヤーとの確認書の作成や請求書のデータ入力・送信などが主な仕事でした。
その後、ホテルの文化アクティビティの開発に関わるようになり、バリ舞踊レッスンを提案しました。
バリ舞踊は華やかな衣装やメイクを施し、リズミカルな音楽に合わせて細やかな手の動きや目の表情を駆使して踊る伝統舞踊です。バリ島の豊かな文化や宗教的な背景を反映しています。星のやバリのアクティビティでは、私が踊りのレッスンや衣装の着付け、メイクアップを担当しています。現在はサービスチームの一員として、ダイニングでのマルチタスク業務とアクティビティ業務の両方を行い、新しいアイディアを提案しています。

バリ舞踊を披露するYunikさん
―――例えばどのような提案をされているのですか。
リンディック(Rindik)のアクティビティを提案しました。リンディックは竹製の楽器で、バリの伝統音楽に欠かせないものです。多様な打楽器の演奏であるガムランでは銅鑼や青銅製の楽器が多いですが、リンディックは金属製の音とは異なり柔らかい音色の日常的な楽器です。「ガムラン・リンディックレッスン」として体験できます。
また、カフェ・ガゼボでのアフタヌーン タペ・モヒートの提案です。以前星のやバリで提供していた日本の甘酒を使ったモヒートにインスパイアされ、タペ・ケタン(発酵もち米)を使ったインドネシアの伝統的な甘酸っぱい飲み物をアレンジし、タペ・モヒートとして再構築して提供することを提案しました。ちょうど、チェックインの時間帯にカフェ・ガゼボで心地よい風を感じながらバリのお菓子とともに味わっていただけます。
タぺ・モヒートとお菓子
さらに星のやバリがあるペンゲンブンガン村と常に連絡を取り合い、地域コミュニティとの良好な関係を維持するように努めています。祝祭期間中は、必要な装飾を施したり、リンディックの演奏や舞踊パフォーマンスなど、地元アーティストが出演する機会を作るように連携しています。バリの、ウブドの、豊かな伝統や文化をゲストにいかに親しみやすく体験していただけるかを、考えていきたいと思っています。
―――仕事をするうえで心掛けていることはありますか。
いつも笑顔でゲストに接し、感謝の気持ちをお伝えするようにしています。ゲストをお名前で呼び、まるで自宅にいるように滞在していただきたいと心掛けています。さらにゲストはもちろん、同僚や私の周りの多くの方に喜び(Bahagia)をもたらすように努めています。
また職場は役職による垣根がなく、すべてのスタッフがサービス向上や新しいアクティビティのアイディアを共有することを目指しています。マネージャーは謙虚で気さくな方ばかりで、私たちの考えを共有し、受け入れてくれます。まるで大家族のような雰囲気で仕事を心から楽しんでいます。
星のやバリのゲストの方はハネムーナーであったり、日常の喧騒から逃れリラクゼーションを求めている方や文化体験を楽しみたい方など、様々です。ゲストがバリでの忘れられない滞在になるように、心を尽くしたいと思っています。

―――Yunikさんが考えるバリやウブドの魅力を教えてください。
美しい自然と伝統文化が調和しているところです。星のやバリでは、特に朝の美しい谷の景色が爽やかな雰囲気を作り出し、心を穏やかにしてくれます。
ウブドの見どころは、建築美を楽しめる王宮や、寺院と可愛い猿たちがいる自然保護区のモンキーフォレスト、アート好きにはウブドアートマーケット。リラックスを求めるならば、聖なる水と美しい庭があるティルタエンプル寺院、そのすぐ北側にあるプラ・メンゲニン寺院は観光客が少なく沐浴により静かに心を整えられるところです。
―――お休みの日は何をされていますか。
ふだんは子どもたちにバリ舞踊を教えたり、家族との時間を大切にしています。ダンスのほかにも歌やプンチャック・シラット(伝統的な武術)などが趣味です。星のやバリで働きながら、将来は家族と一緒にアートスタジオを設立し、バリ文化を守り続けたいと思っています。ですから星のやバリで、バリの文化の一端に触れていただければ嬉しいですね。
関屋メモ
豊かな表情で話すYunikさんはバリ舞踊の素晴らしい踊り手。今回は残念ながらその踊りを拝見することができませんでした。次回はぜひ! Yunikさんをはじめ、スタッフひとりひとりが心を込めてゲストをもてなしている、その想いがやわらかな笑顔から伝わりました。豊かな自然と文化はもちろんですが、穏やかに暮らすバリの人々の笑顔で心を和ませる、そんなバリ旅はいかがでしょう。
取材・文/関屋淳子 写真/yOU(河﨑夕子)







