第32回後編 クルーズを楽しむような気分。「界 アンジン」でくつろぐ休日(静岡県・伊東)

星野リゾートが全国15ヶ所に運営する温泉旅館ブランド「界」。「星野リゾート 界 アンジン」は静岡県伊東市の海を望む地に佇む。印象的な“アンジン”の名は、この地で日本初の西洋式帆船を造船した英国人航海士ウィリアム・アダムスこと、三浦按針に由来します。客室から、湯船から、太平洋を望む湯宿で上質なひと時を。

トラベルライブラリーでのティータイム「紅茶の船旅」

宿1階にあるトラベルライブラリーは、やわらかな陽光が降り注ぎ、いかにも居心地がよさそうな空間。イギリス出身の航海士であるウィリアム・アダムス(三浦按針)にちなみ、海や島、紅茶などにまつわる本が置かれ、ゆったりとソファーに身をゆだねて読書を楽しめます。
 
そんなリラックスタイムのお供に欠かせないのが、紅茶とコーヒー。特に紅茶は「紅茶の船旅」と題し、ウィリアム・アダムスが航海したルート沿いの国や地域の茶葉やフレーバーが用意されています。

茶葉は、中国のキームン、インドのダージリン、スリランカのウバ、日本のべにふうき、フレーバーはアメリカのオレンジピール、南米のレモンバーベナ、地中海のコーンフラワー、イギリスのローズぺタルと、この日は9種類並んでいました。好みの茶葉とフレーバーを選び、ティースプーン1杯ずつティーバッグに入れて味わいます。午後のひと時や目覚めの朝など、その時間おすすめのフレーバーも随時紹介されているので、参考にしてみて!
【利用時間】15:00〜24:00、7:00〜12:00

 

マリン・アンティークな設え、海を望む客室
全45室の客室すべてから太平洋を一望できる絶好のロケーションも魅力の界 アンジン。宿のコンセプトは「船旅」で、客室はもちろん、館内の随所に船や灯台などがさりげなくディスプレイされています。壁や客室のパーテーションには、意匠も美しい古材が配され、マリン・アンティークな空間です。
客室は、ソファでくつろげるリビングスペースとベッドスペースに分かれています。窓際のリビングスペースは、さながら船の舳先。大きな窓から太平洋を行き交う船や、遠くに初島の島影が望め、眼下に三浦按針像が立つ按針メモリアルパークも手に取るように見えます。ベッドスペースには、界オリジナルマットレス「ふわくもスリープ」が。このマットレスが秀逸で、全身が沈み込みすぎず、適度にやわらかいという絶妙な塩梅。きっと雲の上で眠ったらこんな感じだろうなぁと夢想してしまいます。
 
↑スイートのリビング(※テーブルセッティングは「紅茶女子会」プランのもの)とベッドスペース

  
↑スイートにはレコード機器が     ↑キーホルダーも海をイメージ      ↑麻100%の作務衣は肌触り抜群

 
↑ツインルームのベッドスペースとリビング(※テーブルセッティングは「紅茶女子会」プランのもの)

客室でのマッサージも、このふわくもスリープの上で施術を受けます。国家資格者による施術は、アンケートをもとにしたヒアリングからスタート。「ゆっくりとしたリズムの指圧」「リズミカルなテンポの揉みほぐし」からマッサージの好みを選べます。迷った場合は「おまかせ」もあるので、ご心配なく。ゆがみなど、今の体の状態について丁寧に教えてくれるので、普段の生活に戻ったときの参考にもなります。温泉で体を温めたあとのマッサージは、まさに至福。ふわくもスリープのほどよい支えも相まって、マッサージの効果が倍増するように感じられました。


海風渡る露天風呂。湯上がりはサンブエナデッキで一杯を

大浴場があるのは、宿最上階の8階。内風呂は一面が窓になっており、開放感抜群です。大海原を眺めつつ、大浴場に併設の露天風呂で湯浴み。温泉はアルカリ性単純泉で、さらりとした肌触り。刺激の少ないやさしい湯なので、ちょっと長湯も可能です。
とはいえ一度にあまり長い時間、温泉に浸かり過ぎるのは体に負担がかかります。界では「うるはし現代湯治」と題し、忙しい現代人に向けた1泊2日の湯治法を指南しています。それによると、1回の入浴時間は10分ほどがよいそう。浴場内には、10分の砂時計が用意されているので、目安に利用するのもおすすめです。
 
「うるはし現代湯治」について詳しくは、ガイドブックが各客室に設置されています。入浴法や、入浴前・入浴中・就寝前・目覚めのストレッチなど、効果的な湯治方法がイラスト入りで解説されているので、ぜひ参考にしてみてください。

湯上がりは、サンブエナデッキでひと休み。按針がこの地で建造した西洋式帆船「サンブエナ・ベントゥーラ号」からその名をとったこの湯上がり処には、クランベリージュース、ぐり茶、そしてIPAビールが用意されています。IPAことインディア・ペールエールは、インドがイギリスの植民地だった時代、現地のイギリス人に送るために生み出されたビール。ペールエールではインドへの長い航海の途中で腐ってしまうため、防腐剤としてホップを大量に投入してつくられました。ペールエールよりもアルコール度数が高く、苦味が強いのがIPAの特徴です。海を望むサンブエナデッキにて、イギリス出身の按針にちなんでラインナップされたIPAの味わいを堪能しましょう。
 
↑(写真左)「IPA」の提供は15:00〜19:00 ↑(写真右)湯上がり処には「うるはし現代湯治」の冊子のほか、温泉にまつわる本も

【利用時間】15:00〜25:00、5:00〜11:00 ※サンブエナデッキ(湯上がり処)は悪天候時、利用できない場合があります。


界おなじみ「ご当地楽」は三浦按針を深掘り!

「ご当地楽」は界おなじみ、その土地の魅力を知るプログラム。界 アンジンでは「青い目のサムライ紀行」と題し、英国人航海士ウィリアム・アダムスこと三浦按針についてご紹介します。16世紀末、日本に漂着したウィリアム・アダムスがいかにして「三浦按針」という日本名を授かり、「サムライ」と呼ばれるようになったのか…。映像と宿スタッフの熱い語りで紐解く第1部、そして、伊東から江戸への航路を辿り、クイズも織り交ぜて進められる第2部と、あっという間の45分。按針について学んだあと、窓から見える凪いだ太平洋の風景は、また違ったものに見えるかもしれません。
【ご当地楽:1階ロビー】19:15〜、21:15〜


伊東×「三浦按針」、口福の方程式から生まれる和会席
夕食は、海に面した伊東らしく魚介類を豊富に使用した和会席。でも、ここは界 アンジン。ただの和会席ではありません。三浦按針の故郷であるイギリスのエッセンスをプラスした独自のスタイルで供されます。いくつかご紹介しましょう。
「宝楽盛り」は、イギリスのアフタヌーンティーツリーをイメージしたオリジナルのツリーに載せられて登場。帆船の形を模した皿の上に、八寸やお造り、酢の物が美しく盛られています。
台の物は「和風ブイヤベース仕立て」。8種類の魚介類を煮込み、仕上げに伊豆味噌を投入したスープには、これまた伊豆らしく伊勢海老や金目鯛が入っています。ぷりっぷりの伊勢海老にも、ふっくらとした金目鯛にも濃厚な味噌味のスープが染み込み、大いなる海の恵みを感じる一品です。
 
↑宝楽盛り                                          ↑和風ブイヤベース仕立て

焼き物は「和牛フィレ肉と季節野菜の大航海仕立て」。大航海時代、食材の運搬に樽を使用していたことから、樽を模した覆いを被せてお膳に運ばれます。つぼ蒸しでじっくり焼き上げた和牛フィレ肉は、イギリスの伝統料理ローストビーフのような風合い。醤油と玉ねぎを掛け合わせた和風ソースがアクセントになり、最後までさっぱりといただけます。
2種類から選べるデザートは、「界 アンジン特製ぐり茶のソフトクリーム」をセレクト。イングリッシュマフィンをスライスしたラスクとスポンジが添えられています。ぐり茶のほろ苦さとソフトクリームのすっきりとした甘みが絶妙なバランスで、和会席を“口福”に締めくくってくれます。
  
↑和牛フィレ肉と季節野菜の大航海仕立て                            ↑界 アンジン特製ぐり茶のソフトクリーム

界 アンジンではドリンクも多種取り揃えています。セレクトに迷った時は「By the glass set」がイチオシ。その日の「先付け・お椀」、「宝楽盛り」、「揚げ物」、「台の物」、「焼き物」の内容にマッチしたお酒を楽しめます。料理とのマリアージュを心ゆくまで堪能しましょう。
 
↑この日は揚げ物に神沢川酒造 正雪 辛口純米、和風ブイヤベース仕立てに杉井酒造 杉錦 山廃純米 八百萬が供されました

朝食は郷土料理の練り物いかめんち、鯛や焼き豆腐などを投入した潮汁など、やさしい味わいの料理が並びます。すっきりとした酸味が広がるみかんジュースも爽やかな朝にぴったりです。
 
↑中央がいかめんち。表面はパリッと香ばしい                                             ↑生姜がアクセントになった潮汁

                                             

客室から一幅の絵のような凪いだ海を望み、やさしい湯ざわりの温泉に癒される。
大航海時代の歴史ロマンに思いを馳せつつ、紅茶をいただく静かな休日を過ごしてみませんか。

星野リゾート 界 アンジン

静岡県伊東市渚町5-12
界予約センター(9:00〜20:00):0570-073-011
料金:1泊2食付き、2名1室利用時 1名24,150円円〜(税・サ込み)

 

取材・文:川崎 久子

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