第93回 地獄パワーを体で受け止め、和華蘭文化を満喫! 雲仙の歴史と魅力を体感する「界 雲仙」(長崎県・雲仙温泉)

星野リゾートが全国に展開する温泉旅館ブランド「界」の22施設目となる「界 雲仙」が2022年11月25日に長崎県雲仙温泉にオープンしました。九州では5施設目の「界」となり、九州だけで界めぐりが楽しめる充実ぶりに。界ブランド長崎県初進出ということで、その独自の文化をふんだんに取り入れた設えや体験を楽しみに、早速伺ってきました。

噴気立ち込める「雲仙地獄」のお出迎え

長崎空港から雲仙温泉へのアクセスは、タクシーで1時間30分ほど。海沿いに広がる小浜温泉の賑わいを横目に、一気に標高700mの雲仙天草国立公園へと登っていきます。雲仙温泉の開湯は約1300年前に遡り、鎖国であった江戸時代には長崎出島にあるオランダ商館医のケンペルやシーボルトにより諸外国に紹介されたことから、彼らの避暑地として大いに栄えた歴史もあり、山上にありながらもワールドワイドに拓けた温泉地です。

雲仙温泉のシンボル、もうもうと立ち込める地獄の噴気がお出迎え

タクシー運転手さんの「いよいよ到着ですよ」の声に身を乗り出すと、道路一帯が地獄の噴気に覆われて少しも先が見えません! まるで地獄が歓迎してくれているかのようで、思わず「すごい!」とはしゃいでいると宿に到着です。そう、「界 雲仙」はまさに地獄の真隣りにあるのです。字面で見るとなんだか物騒な感じもしますが、大地のエネルギーを間近に感じられる、稀有な立地です。


「和華蘭」の魅力がいっぱいの館内

「界 雲仙」のコンセプトは「地獄パワーにふれる、異国情緒の宿」。エントランスに入ると、目の前の池越しに地獄のひとつである「八万地獄」の借景が広がります。このビューはかなり贅沢! 八幡地獄に面する旅館は「界 雲仙」だけということで “プライベート地獄”として、そのパワーを常に感じながら過ごすことができます。

地獄の風景をいつでも観られるロケーション

エントランスのテーマカラーは赤。エキゾチックな雰囲気が漂います

さらに天井から下がる大きな提灯やショップ、トラベルライブラリーの書棚の装飾品などには、「和華蘭(わからん)」を感じさせる意匠や作品が散りばめられています。「和華蘭」とは、長崎特有の歴史が育んだ文化のことで、和(日本)、華(中国)、蘭(オランダ)の要素が混ざり合ったミックスカルチャーを指します。まさに長崎のご当地グルメである「ちゃんぽん」のごとく、良きものが混ざり合った美しく楽しい文化なのです。到着してすぐに、コンセプト通りのワクワクに包まれる仕掛けに、滞在への期待が高まります。

左上)エントランスロビー全景。3つの提灯はそれぞれ「和」「華」「蘭」の文様が描かれています
右上)トラベルライブラリーには「和華蘭」が学べる書籍も用意
左下)長崎銘菓は由来などが書かれたカードが添えられ、こだわりのお土産探しが楽しめます
右下)トラベルライブラリーではコーヒーや紅茶を波佐見焼のカップでいただけます

界といえば、地域の文化に触れるご当地部屋が魅力ですが、新築である「界 雲仙」は51室すべてがご当地部屋の「和華蘭の間」。客室の設えに和華蘭のスパイスが盛り込まれています。客室はブルーを基調とし、長崎唯一の手織りの反物である島原木綿をモチーフにした縞柄が手仕事の温かさを醸します。
友達や家族と過ごせる4名定員の「特別室」は最上階の1室のみ。4台のベッドと全員で寛げる広さのリビング、テラスには露天風呂とカフェのカウンター席のような湯上がり処もあり、移ろいゆく地獄の湯けむりを眺めながらのおしゃべりに花が咲きそうです。そして4人ともなれば荷物やコート類がかさばりますが、なんとウォークインクローゼットもありトランクなどもすっきり納められます。これは便利!

ブルーとナチュラルな色合いで統一された客室は、格調高く落ち着いた雰囲気に

(左上)部屋そのものの表情となる島原木綿の大きなヘッドボード
(右上)調度品も「和華蘭」。オランダ向けに輸出されたコンプラ瓶は一際の存在感です
(左下)地獄を見ながらいつまでもおしゃべりしちゃいそうな湯上がり処
(右下)収納力のあるウォークインクローゼット。お子様連れならかくれんぼにも役立ちそう

一番多いタイプの3名まで泊まれる「洋室」は、玄関と客室を区切るパーテーションにステンドグラスが用いられています。窓辺は足元までの大きなガラス窓がはめられており、際に立つと地獄に浮いているかのような気分を味わえます。

左)ベッドとリビングスペースがコンパクトにまとめられた「洋室」 右)窓が足元まであるので開放感があります

そして私が利用したのが「客室付き露天風呂」。「ん?書き間違い?」と思った方、鋭い! そう、「露天風呂付き客室」ではなく「客室付き露天風呂」なんです。地獄を望む湯浴みを中心に滞在できる仕様になっており、ベットスペースと露天風呂の境界には湯上がりチェアが置かれた「湯上がり処」が設けられています。テレビは脇の壁付けになっていて視界を邪魔しないので、リビングでありながらも主体は湯上がり処という工夫が凝らされています。実際に湯上がりチェアに寝そべって地獄の湯けむりを眺めていると、その不可測な動きが癒し映像のような役割を果たし、ゆるゆると心が解けていくのを感じます。また、湯船につかりながら右に地獄、左にテレビを見るという、この部屋ならではの過ごし方(非日常感満載でしたよ)も一興です。

「客室付き露天風呂」というネーミングが頷ける、湯あみ主体の客室。ベットスペースまではフローリングですが、
数段上がった湯上がり処は切石が敷かれ、濡れを気にせず過ごせます

左上)地獄を見下ろしながらの入浴は格別。目隠しのブラインドがおろせるので、恥ずかしがり屋さんも安心
右上)シャワーブースや洗面所は部屋の奥にまとめられています 左下)お茶菓子は「界 雲仙」パッケージの
福砂屋カステラ。素朴な風合いがかわいい古賀人形やステンドグラスを模した行灯が和みの空間を演出します

右下)キーホルダーにもステンドグラス。滞在中、常に身近にあるものにも「和華蘭」が取り入れられています


入浴前に参加しておきたい「温泉いろは」

チェックインからひと落ち着きした夕刻にトラベルライブラリーで開催されるのが「温泉いろは」。界22施設に常駐する湯守たちが、それぞれの温泉の歴史や特性、温泉の入り方を解説してくれます。

トラベルライブラリーに現れた大きな3枚の屏風で、雲仙の歴史や泉質、入浴法、湯上がりの秘訣などを教えてくれます

ある程度温泉の知識のある私ですが、ひとつひとつの温泉の歴史や泉質となると知らないことも多いもの。雲仙温泉の1300年にもなる歴史や、かつては「温泉」と書いて「うんぜん」と読んでいたこと、同じマグマ溜まりから湧く長崎の小浜温泉・雲仙温泉・島原温泉の立地と泉質の関連性などとても勉強になりました。

清七地獄にある「界 雲仙」の燗付け施設。温泉を生活に取り入れたエコな仕組みが羨ましい!

なかでも雲仙温泉で古くから利用されてきた給湯設備「燗付け(かんつけ)」には感心しきり。「界 雲仙」でもその立地を生かし、建物直下の地熱を空調や温泉の加温、給湯に用い、冷めた熱をヒートポンプに取り入れて熱交換するという独自の仕組みを取り入れ、化石燃料・二酸化炭素の排出ゼロで熱エネルギーを賄っているとのこと。「界 雲仙」での滞在中は、いつでも地獄の恩恵を受けているのだと思うと、有難い思いでいっぱいです。20分ほどの短い講座だからこそ、温泉に入る前に気軽に参加してみてほしいと思います。


湯小屋での入浴はステンドグラスが輝く朝がおすすめ

大浴場は、宿泊棟とは別棟の湯小屋にあります。内湯と露天風呂があり、内湯には41-42℃の「あつ湯」と37-38℃の「ぬる湯」のふたつの湯船を備えます。泉質は「酸性、含鉄(Ⅱ、Ⅲ)-単純温泉」で、この泉質に入れるのは雲仙温泉の中では「界 雲仙」だけ。鉄分と硫黄分を含んでいるため、天候により茶色から白色まで色味が変わり、この日はかなり濃い茶色に。活きた大地の恵みであることを実感できます。

ステンドグラスの優しい光と金気(かなけ)のあるお湯で、心も体も芯から温まります

滞在中、何度も楽しみたい温泉ですが、朝風呂はマストでお試しください。なぜなら内湯に設置されたステンドグラスが、朝日を受けてもっとも美しく輝くから。色とりどりの光がゆらめくお湯に身を沈めれば、時が経つのも忘れます。一方の露天風呂は、真隣にある地獄の湯けむりを眺めることができる野趣あふれる岩風呂。雰囲気の異なる湯浴みをたっぷり楽しめます。

左)ドリンクやアイスキャンディを片手に寛げる湯上がり処 
右)荒々しい風情の岩風呂は、大地のパワーをよりダイレクトに感じられます


和華蘭の雰囲気いっぱいの食事処で地の味覚を堪能

朝夕ともに食事は食事処へ。ここまで館内の設えを見てきて、界常連の方なら「あれ? 「界 アンジン」と似ているな」と思った方もいらっしゃるかもしれません。実は館内デザインを手がけたのは「界 アンジン」と同じ設計事務所の「株式会社スーパーポテト」。適度なプライベート感を保てる食事処のパーテーションには、その土地の歴史を彷彿とさせるアイテムが用いられた驚きいっぱいの空間です。

タイルや磁器、瓦や木彫りの文様など、様々な衣装で「和華蘭」を演出しています

界の夕食は、全施設共通の取り組みである「ご当地先付け」で始まります。施設それぞれに趣向を凝らした先付けが用意されていて、「ここはどんなアレンジだろう?」と興味を誘います。「界 雲仙」の先付けは「“鬼やらい”湯せんぺい 豚角煮リエット」。長崎発祥の宴会料理である卓袱料理に欠かせない「豚の角煮」のリエットを、温泉水を利用した雲仙温泉の名物「湯せんぺい」につけて味わいます。“鬼やらい”とは鬼を払う行事のことで、地獄から着想を得たもの。木づちで湯せんぺいを割るアクションから始まる、楽しい一品です。

左)「“鬼やらい”湯せんぺい 豚角煮リエット」。優しい甘さの湯せんぺいに角煮のリエットの塩味が合わさり、
食欲を刺激。早速ビールが進みます(笑)
右)「南京すり流し」。ルーツを知ると身近なものの和華蘭食材だったことに気がつきます

「煮物椀」は中国から伝わったかぼちゃを用いた「南京すり流し」。大根餅の揚げだしと棒蟹、花麩があわせてあり、あっさりとした出汁に大根餅と蟹の風味が引き立ちます。続いて酢の物や八寸、お造りを一緒に盛り合わせた「宝楽盛り」は、おひとり様卓袱料理のごとく丸い朱塗りの器で供されます。個々の料理の説明や卓袱料理における作法なども教えてもらえるので、食事で文化を学ぶひとときと化します。食における和華蘭文化の代表ともいえる大皿料理の卓袱料理を、まさかひとりでも体験できると思っていなかったので、うれしいサプライズです。

左)おひとり様卓袱料理の宝楽盛。お刺身は手前の小皿に取り、お匙で醤油を掛けていただくなど独特の作法があります
右)こちらは、おひとり様しゃぶしゃぶ。大人数料理が一人でも楽しめるように工夫されているのが嬉しいです

特別会席の台の物は「あご出汁しゃぶしゃぶ」。あご(トビウオ)が丸々1匹、出汁の中を泳いで登場です。そこに長崎の和牛ロース、伊勢海老、河豚、あごのつみれ、キノコなどの野菜をしゃぶしゃぶし、島原の手延べうどんで締めます。主役級の食材ばかりにどれから箸をつけるか迷ってしまいますが、伊勢海老、河豚、つみれ、野菜類を先にしゃぶしゃぶし、すべてのうま味が出た出汁に牛肉をくぐらせるのがおすすめとのこと。途中、ゆずの皮を砂糖や醤油で煮込んだ調味料の「ゆべし」を加えると、さらに味の変化が楽しめます。最後の一滴まで飲み干したいほどの出汁にからませた島原うどんは、この上なしの最高の締めとなり、お酒もぐんぐん進みます。九州の焼酎も各種用意してあり、長崎は芋もあるが麦が主流とのアドバイスに従って、長期熟成でまろやかな味わいの「青一髪」をロックであわせました。

誰にも気兼ねせず、好きな順番で好きなように味わうしゃぶしゃぶは、一人旅の醍醐味かも

甘味は「枇杷のかんざらし」です。「かんざらし」は島原名物のスイーツで、白玉団子の原料である餅米を大寒の日に水に晒すことに由来しています。実は枇杷の収穫量は長崎が全国一ということで、うぐいす餡には枇杷の種の甘露煮が添えられ、枇杷茶のシロップがかけてあります。驚いたのはこの甘露煮の美味しさ。栗のようなホクホク感と深い味わいがあり、枇杷の種が甘露煮になりえるとは! 新しい出会いに嬉しく食事を終えました。

シロップに枇杷茶の風味が活きていて、さっぱりとした後味。枇杷の種の甘露煮は家でも食べたい美味しさでした

  ***

翌朝は昨晩とはまた違った雰囲気の席に案内されます。夕食と朝食で別の場所に案内するのも趣向のひとつなのだそう。そしてもちろん朝食も和華蘭&地の食材のおもてなしは続きます。

具沢山なうえに、穴子など食べ応えのある素材も入り、満足感ある一品です

最初にテーブルにセットされたのは「具雑煮」の土鍋。島原の乱で天草四郎が兵士にふるまったのが始まりとされ、「雑煮」と付きますが一年中味わえる島原の郷土料理です。山海の幸と丸餅が煮込まれ、ホッとなごむ優しい味わいです。これにサバの照り焼きや豚の角煮などが盛られた和食膳が加わります。ヨーグルトには小浜温泉の105℃の蒸気で蒸したニンジンのジャムが添えられています。

ご飯のお供が多めのラインナップ。ニンジンジャムはクセがなく程よい甘みでした

いつもは朝食を取らないのですが、旅の朝は別腹。その上、早起きして後述のアクティビティーに参加してしっかり体を動かし、朝風呂で温まった後の朝食はおさまりが違います。一泊ですっかり体が蘇ったようで、心身の栄養がいっぱいの界の温泉旅を実感しました。


地獄パワーチャージでリフレッシュ! まるで鬼になった気分!?

界では「温泉いろは」の他にも、「ご当地楽」などのアクティビティを通して深く温泉や地域について学べるのが特徴のひとつ。私は1泊の滞在で「温泉いろは」「現代湯治体操」「雲仙地獄パワーウォーク体験」「ご当地楽」の4つに参加しました。どれも同行者と一緒に楽しめるプログラムになっており、思い出作りに最適です。ぜひ開催時間をチェックして、参加してみてはいかがでしょうか。

●「現代湯治体操」開催時間6:50~7:20

ストレッチは毎日していますが、タオルを使うと可動域が広がりプラスの効果が得られます(翌日、筋肉痛になりました)

私が訪ねたのはこの冬一番といわれた寒波が通過した直後。寒さに負けそうになりながらも朝イチで参加したのは「現代湯治体操」。天気が良ければ「界 雲仙」の向かいにある展望台の上で行うそうですが、この日はトラベルライブラリーでの開催です。前半は界の各施設と共通の呼吸法やストレッチですが、後半は地獄に倣って「鬼」を意識した体操に。タオルをこん棒に見立て、徐々に激しい動きを取り入れ最後には「ウォー」と声も出して、体をほぐしていきます。ちょっと恥ずかしいですが、地獄の鬼になりきっちゃえ、と参加者みんなで吠えて終了です。

●「雲仙地獄パワーウォーク体験」開催時間7:30~9:00

地獄のパワーをダイレクトに感じられるよう、特別な衣装が用意されていて、人生初体験の地下足袋を着用。
杖を手渡され、鬼に金棒気分でスタートです

すっかり体がほぐれたところで、そのまま「雲仙地獄パワーウォーク体験」に参加します。
起点は「界 雲仙」の隣にある「清七地獄」。ここからいくつかの地獄をいつもよりも速足でウォーキングして地獄の噴気を存分に体に取り入れ、最後は地熱を感じながらストレッチして体を整えます。杖は呼吸のリズムを取るのに使います。吸って吐いて吸って吐いて…トントントントン…、呼吸に意識を向けて歩き出すと、途端に体が温まってくるのを感じます。地獄の解説もあるので、運動しながらの地獄ガイドツアーの要素もあり、一石二鳥です。

地獄は近接していてもそれぞれ違う名称がつけられており、それらを巡っていきます。
噴気をいっぱい吸い込んで、大地のパワーを吸収!

本来、降雨(降雪)時は中止のアクティビティですが、今回は途中から雪模様になったため一際の寒さ。しかしながらそれだけに、地熱の恩恵を直に体で受け止めることができました。天然の床暖房である地獄のタイルに一度寝そべったら、もう起き上がることができないほどの心地よさ。ネコの気持ちがよくわかりました。

ストレッチ後は地熱の恩恵を全身で受け止めます。あったかくてもう動けない…

地獄には猫がいっぱい。地面が温かいことを知っていて、みんなのんびり寝そべっています

●「ご当地楽」開催時間:朝9:15から計3回、夕刻は15:30から計4回の開催
チェックアウト前に参加したのが、土地の文化に触れる「ご当地楽」。戦国時代末期に天正遣欧少年使節団が日本に伝えた活版印刷を楽しむことができる人気のプログラムです。多くの「界」では、パブリックスペースの一角を利用して催されることが多いですが、「界 雲仙」では建築段階から活版印刷を「ご当地楽」にすることが決まっていたため、活字と印刷機が並ぶ専用の場所が設けられています。使用するこれらの道具は昭和40年頃まで大阪の印刷所で実際に使われていたもの。界の開業に合わせて譲ってもらい、ここで再び息を吹き返しました。

活版印刷をイメージしたオブジェが印象的な「ご当地楽」ゾーン。活字や印刷機がエントランスから
トラベルライブラリーへの導線の中に組み込まれています

左上)印刷の歴史をわかりやすく解説した紙芝居 右上)ピンセットで活字をつまみ、台にセットします
左下)小さなスペースに小さな活字を入れていくのがなかなか難しい! 
右下)レバーを引くとインクが印刷機に塗られ、押し込むとカードに転写されます

まず紙芝居で活版印刷の歴史を学び、そのあとに実際に活字を選んで配置して、活版印刷機を使ってカードに文字を転写します。活版印刷というと多くの方が宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』を思い浮かべるのではないでしょうか。カンパネルラは活版印刷所で働き、使用した活字を元の場所に戻す仕事をしていましたが、体験ではこの戻し作業までを行います。小学生の頃に『銀河鉄道の夜』で活版印刷を知り、以来ずっとあこがれ続けてきた私は、“あのカンパネルラと同じことするんだ”とひそかな興奮を隠しきれません。何を植字しようかさんざん悩んだ末のフレーズがこちら。

「旅恋」の漢字がなかったのでアルファベットにしてみました。なかなかの出来で嬉しいお土産ができました

きれいに印刷できて大満足。そしてきちんと活字を箱に戻してご満悦。活版印刷ならではの味わいのあるインクの乗り方と凹凸の手触りがとても贅沢なものに感じられて、旅の素敵な思い出ができました。

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まだ開業3か月の「界 雲仙」では現在「手業のひととき」のプログラムを考案中とのこと。構想はいろいろあるようで、きっと和華蘭を体感できる素敵なひとときが生まれることでしょう。夏の「至福の湯上がりビール」と「ご当地かき氷」もどんなメニューになるか気になりますし、また季節を変えて訪れてみたいと思います。

【界 雲仙】
電話: 050-3134-8092(界 予約センター)
料金:1泊25,000円〜(2名1室利用の1名あたり、税・サ込、夕・朝食付)
URL: https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaiunzen/

取材・文/多田みのり

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