高知というと何を連想しますか? 坂本龍馬、鰹の藁焼き、高知城……もちろんそうなのですが、高知には「おきゃく」という独特の文化があります。それを最大限に体感できるのが、2024年6月13日にグランドオープンした「OMO7高知」です。
「おきゃく」とは、皿鉢(さわち)という大皿に豪快に料理を盛り合わせ、自由に料理を取り、上下の関係なく酒を酌み交わし賑やかに楽しむ宴席のこと。集う誰もが献杯・返杯を重ね、ときには通りかかりの人も席に加わることもあるという、おおらかなもてなし文化なのです。いいですね~吞兵衛には楽園のような国です(笑)
館内で開催される土佐のおきゃく講座
そして、このホテルのコンセプトは、「こじゃんと楽宴 さぁ、夜さ来い!」 こじゃんとは土佐弁でたくさん・めいっぱいの意味。夜さ来いは、高知を代表するよさこい祭りと「夜においで!」を掛け合わせています。
では、その全容をご紹介しましょう。
大浴場もある快適な空間
ホテルはとさでん交通(路面電車)の菜園場町電停の近く。高知駅からは車またはタクシーで6分ほどの距離に位置、高層階ホテルで見つけやすいのもポイントです。
エントランスを入ると、大きな土佐犬がお出迎えしてくれます。木彫彫刻家・はしもとみおさんがクスノキの丸太から作った作品。キャー可愛いではない、どすこい!感のある土佐犬です。
パブリックスペースであるOMOベースには街の情報を盛り込んだご近所マップや、OMOカフェ&バルなどがありますが、ひときわ目を引くのが大階段。吹き抜けの広々とした空間で、読書をしたり寛いだりというスペース。でもそれだけではないのです。
OMOベースのご近所マップと吹き抜けの空間
毎日17時からは「えいとこ全部わかるがで!土佐のおきゃく講座」を開催。「おきゃく」の文化を知ることができ、「べく杯」や「菊の花」といった宴会でのお座敷遊びも体験できます。高知の宴会好き、もてなし好きの背景には、四国山脈で囲まれ、交通の便が悪かった時代に、はるばるやってきた人を歓迎したことにもあるとか。チェックインが終わったら、ぜひ参加してみてくださいね。
菊の花やべく杯を体験!
客室は8タイプ133室あり、ウォールアートには土佐犬が宴会を楽しむ様子が描かれていて、気持ちも華やぎます。円卓のテーブルには、皿鉢をイメージした赤い台があり、皆でわいわいと飲食を楽しめそうです。高層階から眺める高知の街も、このホテルならでは。
4名まで宿泊可能のうたげスイート
ところで、OMOのうしろにある数字・アイコンは何を差しているでしょうか?おさらいです。数字は、1.3.5.7があり、サービスの幅を示しています。7はフルサービスホテルの意味で、このホテルでは大浴場も備えているのです。
脱衣所で見守る土佐犬と清々しい露天風呂
5階にある大浴場には内湯、露天風呂、サウナがあります。内湯には見事なタイル壁画が! これは高知の大漁旗をイメージしてつくられるフラフの絵柄を参考にしています。フラフは子供の健やかな成長を願い製作されるもの(主に男児)で、男湯はサーフィンをする長宗我部元親、女湯は宝船が描かれています。サウナはオートロウリュがある本格派、そして露天風呂には高知の植物が植栽された庭があり、ホテルの5階とは思えぬ広がりが気持ちいいのです。
食で感じる高知の風土
太平洋に面する高知は森林率84%ということもあり、海の幸・山の幸に恵まれ、郷土料理が豊富です。鰹のたたきはもちろん、茗荷や蒟蒻を使った田舎寿司、豊富な柑橘類を使った酢の物、ツガニ(モクズガニ)の汁ものなど他の地域では見かけないものも。これらを存分に味わえるのがOMOダイニングで、ビュッフェスタイルで皿鉢をイメージさせる大きめのお皿に好みの料理を取り、盛り合わせていきます。
夕食のビュッフェ
夕食では目の前で仕上げる藁焼きの鰹や芋けんぴ、朝食では柚子が香るフレンチトーストと、日曜市名物のいも天(サツマイモの天ぷら)の作り立てが楽しめます。
朝食のビュッフェも盛沢山!
また、近隣の店で夕食をとったあと部屋でもうちょっと楽しみたい、昼食を食べ過ぎたので夜はつまみ程度にしたい、という方にぴったりなセットが、「酔っちょれセット」(4800円)です。9種類のおつまみと2本の地酒、さらにお座敷遊びの「べく杯」の盃と独楽が付いているのです!
遊び方は簡単、独楽を回し、止まった時に軸の方向にいる人が、独楽に描かれた絵柄(天狗・ひょっとこ・おかめ)の盃に酒を注いで飲み干します(おきゃく講座を受ければわかりやすいです)。部屋で盛り上がること間違いなし!
左がべく杯セット
OMOカフェ&バルでは、オリジナルメニューが楽しめます。鰹を混ぜ込んだソーセージを乗せたカツオドッグはニンニクチップがいいアクセントでボリューム満点。茗荷を使ったみょうがネードとベストマッチです。
オリジナル商品などが並ぶショップも。オリジナルのカツオドッグ
一年中盛り上がる、夏の一大イベント
高知の夏といえば、よさこい祭り。昭和29年、不況を吹き飛ばし商店街を活気づけようと、高知商工会議所の有志により始まった祭りで、今ではロック調、サンバ調など様々な振りと踊りが展開する土佐のカーニバルです。
鳴子
よさこいを踊る際に欠かせないのが鳴子(なるこ)。もともとは田畑の鳥を追い払うためのものだったそう。これを打ち鳴らし皆で楽しむのが、毎日21時開催の「よさこい楽宴LIVE」です。
OMOベースの大階段が客席となって、演出や楽曲、衣装などは地域の方の協力を得て、スタッフが踊り子となり熱気あふれるショーが展開。
途中では、観客も一体となり踊りを体験します。スタッフによる白熱したパフォーマンスは見ているだけでも大興奮!見逃せません!
OMOといえば、OMOレンジャーが案内するツアーも人気です。OMO7高知では、「酢がきいちゅう、日本一の日曜市ツアー」を実施しています。日曜市はお城下追手筋の約1㎞で開催される日曜日の市で、新鮮な野菜や果物をはじめ加工品や生活用品など様々な商品が並びます。売り手は元気のいいお母さんが多く、おしゃべりも魅力でローカル色溢れます。OMOレンジャーのガイドでふれあいも楽しんじゃいましょう。
四国初のOMO、まだまだこれから新たな街歩きなど、さらなる展開に期待が膨らみます。次回訪問の際にはもっともっと高知の「おきゃく」を極めたいと思います。
高知県高知市九反田9-15
1泊5万3000円~(1室あたり・税込み・夕朝食付き)
取材・文/関屋淳子 写真/yOU(河崎夕子)