第102回 味噌、日本酒・ワイン、漬物…、「界 松本」で信州の発酵文化に触れる滞在を(長野県・浅間温泉)


日本の食生活に欠かせない発酵食品。近年はその健康効果が見直され、各地で発酵食品を紹介する発酵ツーリズムが盛んになっています。
城下町・松本の奥座敷、浅間温泉にある界 松本では、当地の発酵文化を知ることができる「信州発酵湯治滞在」が2023年12月1日から始まります。信州の発酵食品と温泉で免疫力アップを目指すこちらのプラン、ひと足お先に体験してきました

「信州発酵湯治滞在」とは?

「発酵」とは、麹菌や酵母、乳酸菌などの微生物が食物に作用し、新たな栄養素を生み出すこと。人にとって有益に働くことはもちろん、食材の保存性が高まるなどいいことばかりです。山々に囲まれ、海から遠く離れた長野では、古くから保存食としても優秀な発酵食品が暮らしに根付いていました。全国生産量第1位の味噌をはじめ、しょうゆ、漬物、酒などさまざまな発酵食品に支えられているからか、長野県は全国屈指のご長寿県でもあります。
「信州発酵湯治滞在」では、1泊2日の滞在中に信州の発酵文化を知って・見て・味わって、さまざまな形でその魅力を体感できます。

その滞在の一例がこちら。

チェックアウトも翌日の12時とゆっくりの設定なので、朝食後にもうひと風呂浴びる時間があります。

発酵文化を知る
・「発酵の時間」
チェックイン後、ひと息ついた16時から行われるのが、発酵食品の知識を深めるための講座「発酵の時間」です。

パネルを用いてスタッフが説明するこちらの講座は、クイズも織り交ぜられて楽しく発酵についての知識を得ることができます(ちなみに私は、クイズの第1問目から不正解でした…)。併せて浅間温泉の泉質や効果的な入浴方法も説明してくれるので、滞在中すぐ実践できるのもうれしいポイントです。

講座のワインとおつまみ。「界 松本の入浴指南」は温泉を楽しむ方法をイラスト入りで解説。

講座には、ワインやスパークリングワインと共に、発酵食品を使用したおつまみも供されます。この日用意されたのは、「ナイアガラ・スパークリング」と「グランポレール 安曇野池田ピノ・ノワール」。おつまみはクラッカーに郷土料理のしょうゆ豆と、石井味噌の3年味噌(詳しくは後述)にクリームチーズを合わせたものがそれぞれトッピングされていました。しょうゆ豆は蒸した大豆や黒豆を使用した、主に北信・中信地域に伝わる発酵食品。ちなみに、香川県にも同様の郷土料理がありますが、そちらはそら豆で作られているという違いがあります。しょうゆ豆はさながら食べるしょうゆで、通常は温かなご飯にのせたり、豆腐や納豆、おひたしなどにしょうゆの代わりにかけたりしていただきます。

発酵文化を味わう
・発酵ウェルカムスイーツを味わう
チェックイン時に用意されるウェルカムスイーツやドリンクも、もちろん発酵食品です。

ウェルカムスイーツは地元の民芸品である竹カゴの中に入っています

「信州味噌モナランタン」は、松本の民芸品「松本てまり」をイメージした最中に、信州二年味噌とキャラメルのフィリングを組み合わせたお菓子。華やかな見た目で食べるのが惜しくなります!
そしてもう一つご用意されるのが、松本市内のチョコレート専門店が作るチョコレートサンド。「チョコレートって発酵食品なの!?」と思いましたが、こちらももちろん発酵食品。チョコレートは、原材料であるカカオ豆を発酵させることで、その香りのもとが引き出され、渋みや苦味を減少させる効果があるのだとか。チョコレートの豊かな香りや味わいは発酵によるものなのですね。
信州の発酵スイーツと共にいただくドリンクは、リンゴの香りも楽しめる和紅茶。長野県在住の陶芸家・森章子さんの手によるカップ&ソーサーで供されます。

・発酵朝食を味わう
朝食でも多彩な発酵食品を堪能できます。信州では、旬の野菜などをたっぷり入れた「具だくさん味噌汁」が日常食として食べられているのだそう。朝食ではそれにならい、具をふんだんに入れた味噌汁が供されます。
信州の名物漬物として知られる野沢菜漬は、青々とした浅漬けに加え、より発酵が進み黄色く色味が変わった古漬けの2種類がお膳に並ぶので、食べ比べを楽しめます。しょうゆ豆も朝食に登場するので、ほかほかご飯や豆腐にのせて、滋味深い味わいを満喫しましょう。

(写真左)長野県は1日の平均野菜摂取量が全国1位なのだそう!朝食の具だくさん味噌汁もその一端でしょうか。
(写真右)夕食の新漬け・古漬け。発酵が進んだ古漬けは酸味がより豊かに感じられます。

発酵文化を見る
界 松本で、さまざまな発酵食品を堪能し、温泉でじっくり温まった翌日は、松本市内の味噌蔵または酒蔵を訪れ、
さらに発酵文化について学びます。

・味噌蔵を見る − 石井味噌
石井味噌は、慶応4(1868)年創業の老舗。杉桶を使用し、伝統の製法を守る天然醸造にこだわった味噌づくりに
定評があります。訪れたこの日は、6代目・石井康介さんに蔵をご案内いただきました。

ほの暗い蔵に足を踏み入れると、大人の背丈よりも高い大きな杉桶がずらりと並んでいます。
合理化が進み、短期間で発酵が進むステンレスの桶を使う蔵が増えている中、石井味噌は昔ながらの杉桶を使用。国産の大豆・米麹を用いて毎年冬から春にかけて仕込み、お盆の頃にはその味噌の上層部と下層部の熟成が均等になるよう入れ替える「天地返し」と呼ばれる作業を行います。そして、1年後に別の桶に入れ替える…。この作業を繰り返し、3年かけて味噌を熟成させていくのです。
信州に伝わる「三年味噌に余念なし」という言葉。「余念」には「4年」の意味が重ねられおり、3年かけて作られた味噌が味・香りともに最高だという意味なのだとか。確かに一年蔵からより熟成が進む二年蔵へと移動すると、蔵の中の味噌の香りが一段と豊かに感じられ、なるほど!と合点がいきます。
ところで味噌は、熟成される過程でメラノイジンという物質が生成されるのですが、この成分は三年味噌(いわゆる赤味噌)に多く含まれています。このメラノイジンには老化防止効果やガン予防効果など、さまざまな健康効果が認められているのだそう。ほかにも、三年味噌には美白効果が期待できる成分も含まれています。
蔵見学の後には、三年味噌の味噌汁の試食もあるので、その奥深い風味を味わってみましょう。

(写真右)三年味噌の味噌汁に、信州名物の寒天を加えていただきます。
(写真左)売店には三年熟成した赤味噌のほか、一年熟成の白味噌も並びます。

・酒蔵を見る – 善哉酒造
松本の市街地を歩くと、各所で井戸や湧水を目にします。そう、ここ松本の地下には、周囲の山々で育まれた清らかな水が蓄えられているのです。

いい水が湧くところに、いい酒あり。
市内を横切る女鳥羽(めとば)川の近くにある善哉(よいかな)酒造は松本市街地で唯一の酒蔵で、店先には名水の一つ「女鳥羽の泉」と呼ばれる湧水が。自由に水を汲めるようになっており、近所の方がペットボトルなどに水を汲んでいく風景が日常になっています。

「いらっしゃーい」、店に入るとにこやかに声をかけてくれたのが、善哉酒造の名物女将。店舗は築100年あまりという古い建物で、酒造りを行う蔵も、最も古いものは江戸時代に建てられたものなのだとか。

ずらりと並んだお酒を、一つひとつ丁寧に説明する名物女将。

善哉酒造での楽しみは蔵見学の後の試飲です。これが、ちょっとすごい。その時季店で購入できるお酒のほぼすべてを味わうことができてしまうのです。
店先のテーブルには、純米吟醸や純米酒、吟醸辛口、大吟醸、にごり酒、古酒十七年のボトルがずらり並べられ、「こちらから順にいきますね」と、女将さんが純米吟醸から順繰り説明をし、お猪口にお酒を注いでくれます。使用している米や製造方法の違いだけでなく、例えば「古酒十七年はチョコレートにも合うんですよ」とマリアージュの説明もさらりと挟み、すかさずおつまみにチョコレートが出てくるという塩梅。女将さんマジックに、親しいおばの家を訪れているようなほっこりした気分になりました。

日1組限定!5種のサウナを独り占めできる「サ旅」の決定版!
「信州発酵湯治滞在」に加えて、おすすめしたいのが、「至福のサウナ貸切滞在」です。

貴天のラディアントバスは、人肌より少し温かい温度に設定された座る岩盤浴。

界 松本には「祥雲」と「貴天」と名付けられた2つの大浴場があり、合わせて813通りの温泉とサウナを体験できます。
11組限定「至福のサウナ貸切滞在」なら、この広々とした大浴場のサウナを貸切できるという贅沢なひと時を過ごせます。
サウナはドライとミストに加え、檜の香りが漂うおがくず風呂、温泉の熱で温められたラディアントバスの5種類。「祥雲」にある立ったまま入る「深水風呂」もユニークです。さらに滞在する客室にもプライベートサウナ付き。まさにサウナ三昧の休日が過ごせます。


(写真左から)客室の露天風呂とサウナ。肌触りにこだわった今治タオル地のオリジナルサウナマット付き。
(写真下)貴天の露天風呂。この情緒あふれる湯船も「至福のサウナ貸切滞在」なら独り占めできます。


                                                    


2つの魅力的なプランに加えて、界 松本は滞在の間、そこここで、“信州らしさ”に触れることができます。
信州ワインバレーの一つ桔梗ヶ原ワインバレーの魅力を知ることができる「NAGANO WINE紀行」や、
メインに「ワインすき鍋」が登場する特別会席の夕食。
そして、地元音楽家が紡ぐ「ご当地楽コンサート」では、松本が“楽都”と称される由縁を垣間見ることができます。

界 松本、信州の魅力発酵中です。


(写真左)「NAGANO WINE紀行」(1,500円/フロントで要予約)のティスティングの例。信州ワインバレーの中で
最も長い歴史を誇る桔梗ヶ原ワインバレーから厳選した3つワイナリーのメルローを味わいます。
(写真右)特別会席の「ワインすき鍋」は、割下に赤ワインを加えているのが特徴。程よい酸味が加わった甘辛い割り下で
サッと煮立てた和牛(この日は信州和牛を使用)は適度にサシが入り、舌の上でとろけるようです。


天井高およそ13m、滝のある中庭に面したロビーは開放感あふれる空間。ここで毎晩、ご当地楽コンサートが開催されます。
演目はクラシックやジャズなどその日によって変わります。

界 松本

所在地:長野県松本市浅間温泉1-31-1                            
電  話:050-3134-8092(界予約センター)
料 金:「信州発酵湯治滞在」2023年12月1日〜2024年2月29日
    1泊48,400円〜(2名1室あたりの1名料金、サービス料込・税込)
    *露天風呂付き和室宿泊、夕食・発酵朝食、発酵ウェルカムスイーツ、
     発酵食品に関するレクチャー(おつまみ・ドリンク付き)、発酵湯浴みドリンク、
     味噌蔵または酒蔵見学

    「至福のサウナ貸切滞在」2023年9月1日〜   
    1泊52,000円〜(2名1室あたりの1名料金、サービス料込・税込)
    *テラス・サウナ付き和室宿泊、夕食・朝食、オリジナルサウナマット、
     サウナドリンク、大浴場の貸切(各1時間30分)、
     アーリーチェックイン(13:00)・レイトチェックアウト(翌13:00)
U R L :https://hoshinoresorts.com/ja/hotels/kaimatsumoto/

取材・文/川崎久子

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