第70回 温泉のデパート・別府に誕生 宿に居ながら昭和レトロな温泉街を満喫できる⁉「界 別府」を楽しみ尽す(大分県・別府市)

温泉旅館ブランド「界」は「王道なのに、あたらしい。」をテーマに、和の趣や伝統を生かしながら、現代のニーズに合わせたもてなしを追求しています。その18番目の施設として202178日にグランドオープンした「界 別府」は別府湾に面する北浜地区にあり、全客室がオーシャンビューという、絶好のロケーションが魅力です。そして宿のコンセプトは「ドラマティック温泉街」。じつは別府温泉の歴史と深く関わるコンセプトなのです。

温泉街の賑わいを再現

日本一の源泉数と湧出量を誇る別府温泉は、おもに別府八湯(別府・浜脇・観海寺・堀田・明礬・鉄輪・柴石・亀川)と呼ばれる個性豊かな温泉地から成ります。温泉の歴史は8世紀まで遡りますが、明治4年の別府築港や鉄道の敷設などにより入湯客が増加、さらに様々な温泉地獄を巡る地獄めぐりが脚光を浴びるようになります。昭和に入ると亀の井ホテルの油屋熊八が地獄めぐりバスを運行、日本初の女性によるバスガイドが誕生します。

そんな別府の歴史は、街中にある「平野資料館」で知ることができます。

代表の平野芳弘さんは別府温泉の宣伝活動に尽力されています

「界 別府」がある北浜地区は、狭義の別府温泉。港の発展とともに温泉街が形成され、夜遅くまで人々が集う歓楽的な要素の強い温泉地で、今も小さな飲食店が連なり独特の雰囲気がたまりません。唐破風のファザードが印象的な市営温泉「竹瓦温泉」、旧別府港に着いた観光客が雨にぬれずに竹瓦温泉へ行かれるようにと設置された日本最古の木造のアーケード「竹瓦小路アーケード」も保存され、コロナ禍でなければネオンに導かれ、確実にここで飲んだくれていたことでしょう。

 竹瓦温泉

「界 別府」には不夜城と称された別府温泉の賑わいを再現する様々な仕掛けがあります。杉板に囲まれたアプローチを抜け、館内に入ると、手湯や足湯がある湯の広場、和紙の提灯が照らす石畳の路地、温泉街にある土産店や夜店をイメージした空間があり、一気に温泉街のわくわく感へ。そして時間の経過とともにその情景がドラマティックに変わるのです。これらの設計・デザインを手がけたのは建築家の隈研吾さん。米誌タイムの「世界の100人」に選出されたひとりです。

桶をアレンジした手湯がある湯の広場

「別府は港町で温泉町。誰にでも胸襟を開く懐の深さがあり、裸の付き合いもあり、地元の方がとてもフレンドリーで、ずっと暮らしたくなる街です。皆さんのご協力で、温泉街の昔懐かしい風情を表現できたと思っています。今後は『界 別府』にお泊りのお客様が地域の街歩きを楽しめるような企画も考えていきたいですね。別府から大分県、そして九州全体のブランド作りに通じる存在になりたいと思っています」と話す総支配人の廣岡太郎さん。

では、具体的に館内の賑わいをご紹介しましょう。

総支配人の廣岡太郎さんのスパポート。別府の湯めぐりを楽しんでいます

「湯の広場」桶をアレンジした手湯と足湯

日の出を目の前にする朝は最高! そして7時からは別府浜辺体操を。

80度の温泉で20分、染料を落として模様を浮かび上がらせる別府温泉絞り体験(930分~ 1800円)。江戸時代に盛んだった豊後絞りの技法をアレンジした体験です。

夜はご当地楽「湯治ジャグバンド」の舞台に。スタッフが大きな木桶に張った温泉に桶を浮かべ太鼓のように打ち鳴らし賑やかに演奏。和太鼓演奏グループ「DRUM TAO」の監修による本格的なショーです。

「ラボ」温泉の配管をモチーフにした空間

昼は温泉水を使ったミストづくり。香りは杉・かぼす・ラベンダーから選びます。別府温泉の泉質も勉強できますよ。

夜は夜店をイメージした雰囲気になり、昭和レトロなスマートボールや温泉カクテルならぬ温泉モクテル、温泉蒸し玉子も登場。温泉名人と温泉談議に花を咲かせてください。

さらに、「流しのぶんちゃん(3代目)」がリクエストで歌ってくれます!持ち歌は1000曲、普段は別府のネオン街を「はっちゃん・ぶんちゃん」のコンビで練り歩き、流しの文化を継承しています。この日はリクエストの米米CLUB「君がいるだけで」を熱唱。初めてうたったそうです。

※はっちゃん・ぶんちゃんの来館については不定期

 

オール大分の料理・客室、そしていい湯だな

客室は別府の名所「血の池地獄」の赤から着想を得た柿渋色が基調。豊後絞りのヘッドボードやフットスロー、照明器具もあり、落ち着いた雰囲気です。窓からは穏やかな別府湾が気持ちのいい広がりを見せます。民芸の器・小鹿田焼(おんたやき)の茶碗も用意されています。また館内には大分を象徴する竹が多用され、どこもかしこも清々しい印象。

客室からは朝陽が楽しめます

夕食は名産のカボスをふんだんに用いています。カボスを使った麺をアレンジした先付、ひおうぎ貝や鯖、和牛、椎茸パウダーを練り込んだ麺などの豊後鍋は、たっぷりのカボスを出汁に潜らせて香りを移します。土鍋ご飯もカボスの香り。お供は大分の麦焼酎で。

 

朝食は別府ならではの地獄蒸しをイメージした蒸し物が付きます。

 

さて、大浴場へ。内風呂には源泉かけ流しのあつ湯と、ぬる湯の2つの湯船、そして露天風呂があります。まずぬる湯で体を慣らしてからあつ湯へ。

泉質はナトリウム‐塩化物・炭酸水素塩泉。季節や時間帯で透明から赤褐色に変化します。重曹成分で肌の角質を柔らかくし、滑らかにするとともに、塩化物が身体を芯から温めます。壁には花を模った臼杵焼がはめ込まれていますが、2つだけ、お地蔵様も。探してみてくださいね。

別府の湯は泉質も様々で成分が強い湯もありますが、こちらの湯は体への負担が少ないやさしい湯。「いい湯だな、ぷは~」と楽しんでください。

 これまでの「界」とは少し異なる、新しいスタイルの「界 別府」。温泉街という個性を全面に打ち出し、宿泊客もそれを存分に楽しんでいる様子が印象的でした。2022年夏にはやはり隈研吾さんの手による「界 由布院」も開業するとのことで、おんせん県・大分がますます盛り上がることでしょう。

 

界 別府

予約℡0570-073-011(界予約センター)

料金:12食付きひとり31000円~(21室利用時、税込み)

 

取材・文/関屋淳子 撮影/yOU(河崎夕子)

 

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