世界のファインダイニング by 江藤詩文

第56回 ”ソウル行ったらあれ食べたい”のすべての料理の最上級を味わえる「7th DOOR」(韓国・ソウル)

ジューシーで香ばしい焼き肉、とろっとした口溶けのうま味が凝縮したカンジャンケジャン、しっかりと出汁の効いたバラエティ豊富なスープ麺……。ソウルに行ったら食べずにはいられない料理は枚挙にいとまがありませんよね。

ソウルは屋台や食堂が充実していて食べ歩きが楽しい街です。けれども食べ慣れた料理の本質を味わいたいならここしかない。それが「ミシュランガイド」一つ星、「アジアのベストレストラン50」2023版で55位の「7th DOOR」です。

▲「7th DOOR」オーナーシェフのKim Dae-chunさん

オーナーシェフのKim Dae-chunさん(キムさん)は韓国のガストロノミー界のみならず日本のシェフたちからも信頼の厚いアジアのスーパースター。日本での修業経験もあり日本語が堪能で、「世界最高」とされる日本の高品質な素材のスタンダードを知り尽くしたうえで韓国の食材を選び抜き、丁寧な料理に仕上げています。


▲松の実のお粥に続いて登場した前菜には韓国の漬け物など保存食も使われています

スタイルはコンテンポラリーですが、どこか懐かしく包まれるような温かさがあるのがキムさんの料理の持ち味。それは韓国の普通の家庭の物語が料理に込められているからかもしれません。たとえば「ご飯どろぼう」といわれるほど白米と相性のいいカンジャンケジャン。その最高の部位をキムさんは白米と混ぜ、ひと口大にして極上の韓国海苔にのせました。


▲生食のカンジャンケジャンは信頼できるお店で食べたい。
キャビア&シャンパンに合わせるのは大人の遊びです

韓国では子どもの食が進まないと、親がご飯とおかずを小さくまとめて海苔で包み子どもの口に入れる文化があるそう。ちなみにソウルっ子の友人は小さい頃ぐずって口を閉じていると鼻をつままれて食べさせられたとか(笑)。日本だったらさしずめおにぎりでしょうか。韓国のオモニの手の味、韓国人なら誰でも記憶に残るソウルフードなんですね。

▲韓国焼肉は醤油ベースのタレ漬けとみそ漬けの2種類。
自分ではできない絶妙な焼き加減に仕上げてくれます

もともと中国由来の東洋医学が韓国で独自に発展した医食同源の「韓方」が生活に根付いていて野菜をふんだんに使う韓国料理。キムさんはここに世界のトレンドである発酵や熟成の技術をプラスして伝統の味をより現代的に、食べる人の心身のバランスを調えて健康な状態に近づけるヘルシーなメニューを日々創り出しています。

▲エントランスへのアプローチには「発酵中」や「熟成中」のあれこれがずらり

料理のおいしさは食べ手の好みや経験値、体調などによって異なります。けれどもおいしさに絶対値があるとするならば「7th DOOR」の料理は「普遍的な韓国料理」の最高峰。ソウル旅で1回だけファインダイニングに行くなら真っ先に予約したい一軒です。

7th DOOR https://www.7thdoor.kr
*公式サイトから予約サイト経由で予約できます
*記事内の情報はすべて訪問時のもの。季節やお店の事情により変更されます

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