世界のファインダイニング by 江藤詩文

第45回 みんなで星12個・9人のスターシェフが博多を彩った一夜限りの晩餐会「Dream9」後編(福岡県・博多)

前回ご紹介した、新時代を象徴する華やかな一夜のダイニング「Dream9」。日本を代表する9人のシェフたちが福岡・博多の新施設「010 BUILDING」の1階にオープンした「GohGan」に集結しました。

前編から引き続きプチフールまで全品をご紹介します。
まずは今回初参加したこの方の一品から。

(cenci(チェンチ)オーナーシェフの坂本健さんは、
誰もが楽しめる伝わりやすいおいしさを京都から世界に発信しています)

鹹豆漿(シェントウジャン) cenci 坂本健さん
2022年「アジアのベストレストラン50」43位、「ミシュランガイド京都・大阪2023」一つ星

台湾の鹹豆漿をイメージして豆乳をゆるく固めたスープに、京都の熊肉のミンチを詰めたラビオリを浮かべて、イタリアのオリーブオイルを回しかけました。仕上げには、辛味と香りの要素として完熟した山椒の粉をぱらり。
「季節柄、温かい料理でおもてなししたいと考えました」と坂本さん。


鱈の粕汁 傳 長谷川在佑さん

2022年「世界のベストレストラン50」20位、2022年「アジアのベストレストラン50」1位、「ミシュランガイド東京2023」二つ星

大方の意表をつき長谷川さんは魚料理を担当。福岡・糸島のかぶをふっくらと炊き、今が旬の白菜と青森のタラの白子を合わせて温かい粕汁に仕立てました。酒粕はもちろん「傳」でもおなじみの日本酒、石川「吉田酒造店」の銘酒「手取川」のものです。


(デンクシフロリを卒業した清水将さんの動向は、
ガストロノミーファンにとって2023年もっとも気になるニュースのひとつ。今後も注目です)

うしの中山肥育の鹿児島牛 黒文字焼き デンクシフロリ(イベント開催時) 清水将さん
「ミシュランガイド東京2022」一つ星
*News 2022年末でデンクシフロリを卒業

6.8kgほどの「鹿児島黒毛和牛 グランドチャンピオン牛」のサーロインを丁寧に掃除して、熱した頁岩のプレート(*前回の記事を参照してください)に黒文字を敷き詰め、その上でかたまり肉を手で転がすこと4時間半。ファン待望の清水さんの肉料理が今回も登場しました。
付け合わせはvilla aidaの自家菜園から届いたほうれん草とプンタレッラ。ほうれん草はソテーしてクリームのソースを和え、プンタレッラは和風の出汁で炊きました。


GohGanスパイシークラブカレー GohGan 福山剛さん
2022年「アジアのベストレストラン50」36位、「ミシュランガイド福岡2019」一つ星(共にLa Maison de la Nature Goh)
*News 2023年1月11日、ターブルドットのファインダイニング「Goh」をオープン(まもなくレポート予定)

「GohGan」を共に手がけるGaggan Anandさんと共同で開発したカレー。インドカレーとタイカレーのいいところをかけ合わせたような、カニのうま味がしっかり出た汁ものとしてのおいしさと、煮込みすぎないフレッシュなスパイスの香り、ココナッツミルクのマイルドなコクが絶妙のバランスです。今回は贅沢にタラバガニを使用。

(秋田にあるStove+(ストーブプラス)オーナーパティシエの齋藤毅さん。
高田さん(下左)から始まった白銀を思わせる白い世界観とリンクする白いデザートをデザインしました)

ハチミツ / プチフール  Stove+ 齋藤毅さん

ハチミツ
フランス・プロヴァンスの百花蜜を使ったアイスクリームに、さつまいものクリーム、牛乳・バニラ・ヘーゼルナッツのソース、焼きいものメレンゲ、ハニーライムのコンフィを添え、柚子のゼストを振りかけました。
高田さんから始まった白銀を思わせる白い世界観とリンクする白いデザートです。

プチフール
左手前から時計回りに、お抹茶と餡、生チョコレート、キャラメルのタルト、シュトーレン、グレープフルーツのコンフィ

「Dream9」が開催された同日同時刻、福岡ドームでは関ジャニ∞によるドームライブが行われていました。街にはジャニーズファンが溢れていましたが、GohGanに集ったガストロノミーファンの熱気もすごかった。いまやアジアのスターでありアイドルになった彼らですが、日本で食べるものといえばスシにテンプラ、スキヤキだった時代に、彼らは自分たちの手で世界に自分たちの居場所をつくっていったんですよね。国も大きな組織も何も動いてくれないなか、ただ名もなきファンの応援だけを心の支えにして。

傳がなければ「和食」のユネスコ無形文化遺産登録は遅れたかもしれないし、長谷川さんと川手さんがいなければ美食をメインとしたインバウンドの盛り上がりも遅れたでしょう。
年が改まり美食大国日本で次のスターを探そうと、世界のフーディーズが日本にわらわらと上陸しています。

(福山さん(左)も大満足、この夜の影の”メッシ”と呼びたい素敵なペアリングを考案してくれた
GohGanソムリエの嘉村慎之助(かむら・しんのすけ)さん)

みなさんも、そろそろおいしい旅を始めたくなっているのではないでしょうか。私も旅を再開して、2022年下半期には17道府県(東京を除く)・14カ国のレストランを訪れました。
新しい才能をこれからもこちらでどんどん紹介していきますので、引き続きどうぞお楽しみください。

Tag

このページをSHAREする

最新記事一覧へ