世界のファインダイニング by 江藤詩文

第31回 日本の季節と食文化の“楽しい”を京都から世界に発信する 「LURRA°(ルーラ)」(京都)

 

火を眺めていると落ち着きますよね。パチパチと軽やかな音をたてて爆ぜる薪の前には、楽しげに共同作業をしながら、ひとつの料理を創り上げていくグローバルな若者たち。肩の力の抜けた風通しのいい雰囲気に、見ているこちらまで引き込まれるレストランが、京都でいま話題の「LURRA°(ルーラ)」です。

さんま、トマトと山わさびのクレマ

築130年ほどの一軒家古民家をリノベーションしたレストランのオーナーは、ゼネラルマネージャーの宮下拓己さん、シェフのジェイカブ・キアーさん、ミクソロジストの堺部(さかべ)雄介さんの3名。役割は分担しているけれど上下はないというフラットでカジュアルな関係が、そのままチーム、ひいてはレストラン全体の軽やかな空気につながっています。

左から、宮下拓己さん、ジェイカブ・キアーさん、堺部雄介さん

3人が出会ったのは、ニュージーランド・オークランドのイノベーティブダイニング「Clooney」(現在は閉店)。ニュージーランド人の同業の友人によると、かなりエッジの効いた革新的な料理で、ニュージーランドのフードシーンを騒がせた伝説の一軒だったとか。

ここで経験をシェアした彼らの料理も、ジャンルにはめるのは難しく、LURRA°料理と呼ぶのがぴったりな感じ。

 

京都の時季の野菜、くるみのモレとエディブルコンポスト

たとえばシグネチャーディッシュで、メインとして提供される薪焼きの京野菜。土の香りをまとった、水分が少なくほっくりした根菜が中心となる季節の野菜に合わせたのは、メキシコ料理からヒントを得たモレソース。これを土に見立てて白い皿の全面に塗ってあるのです。おもしろい。

蜜ろうのアイスクリーム、ミードと蜂の子

グローバルなバックグラウンドを持つオーナー3人に加えてスタッフもグローバルだからか、日本人の目から見ても新鮮な、なんというか逆輸入された日本文化を体験しているような世界観を楽しめます。

ノルディックの影響も感じさせる秘密基地のようなラボ

屋根裏にはラボのようなスペースがあり、ジェイカブさんが研究している発酵食品がずらり。デザートタイムはその日出会った一期一会のゲストが全員で大テーブルを囲み、新しいコミュニケーションが生まれてほしいそう(現在は感染対策のため中止しています)。

ここから何か新しいカルチャーが発信される。そんなワクワクした気分を味わえました。

 

LURRA°(ルーラ)

公式サイトから予約サイト経由で予約できます

※料理はすべて訪問時のもの。季節などにより変更されます

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