世界のファインダイニング by 江藤詩文

第26回 軽やかに時代の気分を映し出すHARAJUKUガストロノミー「kiki harajuku(キキ ハラジュク)」(東京都・原宿)

「東京で、何食べる?」

アジアのフーディーズが、再び日本旅行の計画を立て始めた今日この頃。ひと昔前なら、外国人旅行者が東京で食べたい料理といえば、スシにテンプラ、スキヤキなどでした。でも今どきのフーディーズは、もはやそれだけでは満足しません。

まして今は「ローカルガストロノミー」が注目され、和歌山だ富山だと人々が地方へ動く時代。そんな現在の東京らしさとは何なのでしょうか。

今月は、いまの東京らしい個性が光る「東京ガストロノミー」の担い手2店をご案内します。

kiki harajuku オーナーシェフ・野田雄紀さん

最初にご紹介するのは、原宿に店を構える「kiki harajuku」。見て見て。オーナーシェフ・野田雄紀(ゆうき)さんのビジュアルからして東京らしさ満点。フレンチからキャリアをスタートして、パリのタイユバンで3年間修業をするなど、フレンチの道を歩んできた野田さん。ですが、いまの彼がつくる料理は、フレンチをベースにしながらも、蕎麦や寿司まで取り込むなど、風通しがいいフリースタイル。

雲丹すだちグリーン蕎麦

特に注目したいのはフルーツの使い方。プラムなど酸味の強いものから、ココナッツのような独特の香りとクセがあるものまで、そのアレンジは料理に楽しさと遊び心を加えています。酢豚にパイン、ポテサラにりんごは苦手な私でも、なぜか野田さんの「料理にフルーツ」は大好き。

牡丹海老 ブーダンオマール

この「何でも取り込むおおらかな料理」が生まれるのは、野田さんの吸収力にあると私は思っています。炭焼き職人を訪ねれば、飲んだり食べたりしている周囲に構わず、焼きもの係を一手に引き受け、備長炭の扱いをたちまち習得したり。柑橘農園を訪ねれば、手渡される果実を次々と味見して、落ちた小さな実まで拾い集めて持ち帰ったり。そんな風だから生産者にも先輩料理人にもかわいがられて、どんどん成長しているように見えます。

昨年は、レストランの定休日を使って、格式高い日本料理の老舗「日本料理 重よし」で、あの金髪アタマのまま一年間研修したそうですよ。きっとここでも愛されたのだろうな。

ランチ・ディナーともおまかせコースのみ。早めの予約がおすすめ

国籍フリー、マルチカルチャーな野田さんの料理は、まさに今の東京を味わっているみたい。これからは日本料理も極めたいそうで、今後が楽しみでしかたありません。

料理を通して自分をアップデートする。ガストロノミーには、そんな楽しみ方もあるのです。

不定期で発売される焼き菓子はお取り寄せもできます

 

kiki harajuku(キキ ハラジュク)https://kikioishii.com

予約サイトの「TableCheck(テーブルチェック)」からオンライン予約できます。

※料理はすべて訪問時のもの。季節などにより変更されます

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