第41回 深い緑に抱かれた「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」で、NEWオープンのフレンチと、豊富なアクティビティを楽しむ(青森県・十和田市)<前編>

うだるような暑さが続く都会から、涼やかな清流が流れる青森県の奥入瀬へ行きませんか? 今回ご案内する「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」は、2013年に取材した「苔ガールステイ」プランで宿泊体験しましたが、それから6年。ロビーやラウンジなどがリニューアルされ、体験プランもますます充実し、さらにフレンチレストランが今年7月にオープンし、より大人の方も楽しめるホテルになったと聞き、期待に胸を膨らませて訪れました。

 

渓流沿いのテラスでのアペロからスタートする「Sonore」

岡本太郎の作品が出迎えてくれる

東北新幹線が発着するJR八戸駅から無料送迎バス(予約制)で約1時間半、奥入瀬渓流沿いに建つ唯一のホテル「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」に到着。エントランスを入ると、眼前には広々とした「ロビー 森の神話」が。苔色のソファベンチや渓流模様の絨毯など、空間全体が奥入瀬渓流を表すようにリニューアルされました。奥には高さ約8.5メートル、重さ5トンもの岡本太郎作のブロンズ製暖炉の煙突。そして暖炉越しの大きな窓の外に広がる緑。幾種類もの木々が重なり、緑のグラデーションが風に揺れその美しさに息を飲みます。チェックインはこちらのロビーで行います。

 

存在感たっぷりの「ロビー 森の神話」の煙突

西館の「ラウンジ 河神」にも岡本太郎の作品があります。「ロビー 森の神話」は男性の神を、こちらの「ラウンジ 河神」は女性の神を表しているそうです。重さ7トンのアルミ合金製の大きな暖炉は1996年に完成した岡本太郎の遺作です。「ラウンジ 河神」にはライブラリースペースがあり、時間によりカウンターテーブルにはコーヒーや紅茶などが用意されます。湯上がりの方、アクティビティの待ち合わせの方、ディナー前、朝食後など、どの時間に訪れても思い思いに過ごす方がいらっしゃる居心地のいいスペースです。

 

奥入瀬や岡本太郎関連の書籍も置かれている「ラウンジ 河神」

奥入瀬渓流の素晴らしい景色を一望する客室

今回私は「渓流和室」という、目の前に流れる奥入瀬渓流を見下ろせる客室に滞在しました。特徴的なのが、奥入瀬渓流を眺められるように窓辺に置かれた大きなソファ。大人が2人でゴロンと寝転がっても余裕のサイズです。ソファに寝ながら奥入瀬渓流の大自然を眺めていると、この上ない幸福感を味わえます。床の間をアレンジした斜めになった壁のデザインや流線形の壁紙は奥入瀬渓流を表現しているそう。仕切りのないワンフロアの部屋ですが、居間、ベッド、ソファのある縁側と、床にあるちょっとした段差で部屋がさりげなく分けられています。「和」を強調しすぎない空間で、とても気持ちよく過ごせました。

ルーペや、温泉へ行くのに便利なバックも用意された客室

うれしいのが、客室に置かれたルーペ。奥入瀬渓流のミクロの苔の世界を覗くのに必須のアイテムです。参加したプログラム「渓流モーニングカフェ」や「奥入瀬目隠しさんぽ」へも持参しました。

 

品格あるフランス料理は渓流テラスからスタート

館内には、りんごメニューや郷土料理を味わえるビュッフェレストラン「青森りんごキッチン」がありますが、この晩いただいたのは今年7月10日にオープンしたばかりのフレンチレストラン「Sonore(ソノール)」。現代的なフレンチを味わえる、大人がゆったりと過ごせるダイニングです。Sonoreとは、フランス語で “朗々と響かせて”という意味の音楽用語。奥入瀬渓流の音、品格あるフランス料理とワインの響きあいという意味が込められているとか。

Sonoreでのディナーは渓流沿いのテラスでのアペロ(食前酒とおつまみ)からスタートします。こちらの渓流テラスは客室からも見えたのですが、「あの席に座ったら心地いいだろうな」と思っていたその場所でした。まさかこんな特等席で食事をいただけるとは!と感激しきり。感動のあまりに笑顔がほとばしりそうになる心を少し抑えながら席へと向かいます。前日に雨が降ったせいもあったのか、この日の奥入瀬渓流は勢いよく流れており、流れる音も豪快。少し肌寒いくらいでしたがブランケットを用意していただき、渓流に最も近い場所でアペロの時間が始まります。

 

奥入瀬渓流に面した屋外テラス

おつまみとはいってももちろん本格的。この日いただいたアペロのひとつが、泡状にしたトマトのふわふわのゼラチンでヒラメのマリネをくるんだ一品。豚とハーブのゼリー寄せやワカサギにゴボウを巻き付けたフリットなどが添えてあります。見た目のかわいらしさもお料理をより魅力的に見せてくれます。そして屋外テラスをより魅力的にしてくれるのが、時の流れです。席に案内された時はまだほんのり明るかった林が、アペロが進むにつれて夕暮れが迫り、やがて照明とテーブルに置かれたひょうたんランプのみがぼんやりと灯る暗闇へと包まれます。こんな風に大自然に身も心も任せるゆったりとした時間こそが最も贅沢なのかもしれませんね。

 

ひとつひとつ丁寧に作られているのがよくわかります

アペロの後は館内のダイニングでメインのコース料理をいただきます。「鮪のオペラ仕立て 帆立貝とイカのムース」は、帆立とイカのムース、生海苔のペースト、マグロのタルタルなどを3層に重ね、マグロの魚醤を隠し味にしてウニやキャビアをトッピングした美しい一品。魚介のコンソメにマグロの削り節で香りをつけたジュレとともにいただく、まるでお造りのような夏にぴったりな涼やかな前菜です。

「鮪のオペラ仕立て 帆立貝とイカのムース」

この日のメインは「仔鳩と鮑のトゥルト 鮑の肝のサルミソース」。仔鳩の胸肉と鮑をパイ生地に包み、赤ワインと鮑の肝などで作った濃厚なソースでいただきます。長い伝統のあるフランス料理は「ソースが命」ともいわれますが、“伝統に敬意をはらいながら、現代的で洗練されたフランス料理”をコンセプトとするSonoreらしく、鳩肉を引き立てるソースはとろっとしていてとても濃厚。ですが、その中にも赤ワイン独特の渋みがほんのりとあり、ふわりと香る赤ワインの風味とともにソースに深みを感じさせます。添えられた蕪のサラダと豆科の植物「ホドイモ」のピューレが味に変化をつけてくれます。

 

「仔鳩と鮑のトゥルト 鮑の肝のサルミソース」

昼間とは異なる表情を見せる自然と一体となった渓流テラスでアペロをいただき、奥入瀬渓流の自然をイメージした岩や木をモチーフにした屋内ダイニングでコース料理を味わう。ちょっとしたシチュエーションの違いですが、空間の流れも楽しめる「Sonore」でのディナー。ソムリエと会話しながら料理に合うワインをセレクトし、丁寧に仕上げられた料理とともにゆったりといただく時間は極上の思い出となりました。

大人のディナータイムを過ごせるSonore

 カクテルタイム・渓流テラスでの朝食、そしてランチを

岡本太郎作の暖炉が灯る「ロビー 森の神話」は20時からはバーへとその姿を変えます。陽光差し込む日中とはまったく違い、特徴的な赤いソファが落ち着いた色合いの照明に浮かび上がる空間となります。コーヒーやワイン、ブランデーやウイスキーに加え、奥入瀬の苔をイメージした「苔カクテル」もバータイムに味わえます。ピンク色の桜のシロップ、抹茶のリキュール、グレープフルーツジュースを炭酸で割ったオリジナルカクテルです。抹茶の風味を少し感じさせる爽やかなカクテルをいただきながら、夜はしっとりと更けていきました。

寒い時期になると暖炉に火が灯る「ロビー 森の神話」

 

翌日は、渓流テラスでいただく夏限定の朝食でスタート。オリジナルのウッドボックスに詰められているのは、スモークサーモンのオープンサンドや、ほうれん草とベーコンのキッシュ、ミネストローネスープなど。彩り豊かな料理の数々を、目にもまぶしいほどの緑と澄み渡る朝の空気、そして勢いよく流れる瀬音に包まれて味わえるなんて、なんて贅沢な時間なのでしょう。「今日もとってもいい一日になりそう」とつくづく思わせてくれます。

渓流の音を聴きながらの贅沢な朝食時間

 

星野リゾート 奥入瀬渓流ホテルでは宿泊者限定でランチもいただけます。おすすめは「苔ランチプレート」。ニンニクとパセリのみじん切りの緑色のソースを乗せた鶏肉で、苔むした岩に見立てたアイデアたっぷりの楽しいメニューです。一緒に添えられたルーペにも遊び心を感じます。11:30~13:30L.O.なので、渓流散策前後やチェックイン前に訪れてみてくださいね。

料理なのに、思わずルーペでのぞき込んでしまう

 

後編では「星野リゾート 奥入瀬渓流ホテル」で体験した楽しいアクティビティをご紹介!

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