ひとり旅にアート心も入れて by 塩見有紀子

第55回 ルーブルだけじゃない! パリで訪れたい個性派の2つの美術館(フランス・パリ)

ピカソ美術館

開館中に起きた大胆な盗難、EU圏外客の入館料大幅アップなど、なにかと話題のパリのルーブル美術館は、『モナリザ』目当てでパリ観光では一度は訪れる名所。印象派作品で知られるオルセー美術館や、モネの『睡蓮』で知られるオランジュリー美術館も有名どころです。でも、パリには他にも個性的なミュゼが多くあります。

「ピカソ美術館」があるパリ・マレ地区には、石畳や優雅な建物が今も残り、カフェやギャラリーが点在します。このエリアに建つ「オテル・サレ」(Hôtel Salée)は、17世紀に塩税徴収官のピエール・オベールの邸宅として建てられました。パリで多くの時間を過ごしたパブロ・ピカソが1973年に亡くなった後、遺族が絵画、彫刻、デッサン、ポスター、版画など約5000点もの作品をフランス政府に寄贈し、これらの作品を展示するためにこのサレ邸が選ばれました。そして、建物修復後、バロック様式の優美さと重厚さが融合したピカソ美術館が1985年にオープンしました。

 膨大な作品コレクションを展示

女性遍歴を重ねたピカソらしい作品の数々

2000年代にもモダンな展示室が新設されましたが、3階建ての17世紀のオリジナルの建物は、ピエール・オベールが私腹を肥やして贅を尽くして建てたことから、外観はもちろん大きな階段ホール、柱や縁に施された彫刻など、瀟洒な建物自体が歴史的価値を有しています。

贅を極めた美術館

展示室の窓から時おり覗くパリの風景

https://www.museepicassoparis.fr/

人間や動物などを極端に細長くデフォルメした彫刻で知られる、19世紀前半に活躍したスイス出身の彫刻家・画家のアルベルト・ジャコメッティ。一度見たら忘れられない独特のフォルムは、無駄なものをそぎ落としていったようでもあり、どこか儚さと悲哀を放っています。

「ジャコメッティ協会」は、ジャコメッティが40年間暮らし、制作し続けたパリ14区のモンパルナス地区にあり、内部にジャコメッティのかつてのアトリエが再現されています。アール・ヌーヴォーとアール・デコ調の建築を改築した、繊細なタイル張りの外装やドアや手すりの青が目を引く美しい建物です。

INSTITUTE CIACOMETTI」と小さな看板のみ

扉を開けた途端に目に入るのが、ジャコメッティのアトリエ風景を忠実に再現したスペース。粗末なベッドや椅子、画架の間に石膏が数多く並んでいます。作品自体、私はとても好きなのですが、幾度ともなく削ぎ落とされて衰弱したひどく孤独な人に見える作品たちに囲まれた空間で制作していて、よく狂わなかったな、などととても狭いアトリエを眺めながら思ってしまいます。

ジャコメッティのアトリエが再現された空間

この建物自体はそこまで大きくないので展示作品も多くありません。ですが、ジャコメッティのシンプルな作品とは対照的に、植物模様や幾何学模様などアール・ヌーヴォーとアール・デコが混ざった華麗な空間に身を置いていると、ジャコメッティの作品によって削りとられた精神がゆっくりと癒されていく感じがします。

 アール・ヌーヴォー様式の装飾

そして、2028年にはパリ7区のアンヴァリット地区にある歴史的建造物を利用した、巨大なジャコメッティ美術館&芸術文化学校、カフェ、レストラン、書店などがジャコメッティ財団により新たにオープンする予定です。

ルーブルやオルセーはかなり混雑していますが、比較的のんびりとじっくり鑑賞できるパリの個性派美術館を訪れてみてはいかがでしょう。

https://www.fondation-giacometti.fr/en

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