心と体によく効く、大人の山歩き by 西野淑子

第52回 心身を心地よく!清涼感あふれる水と緑の渓谷歩き。西沢渓谷(山梨県・山梨市)

夏は渓谷歩きや滝めぐり、「水」を交えた山歩きが心地よく楽しい季節です。響き渡るせせらぎ、木漏れ日の心地よい樹林を楽しみながら歩ける、美しい渓谷をご案内します。

せせらぎが響き、木々の緑が心地よい渓谷道

山梨県山梨市に位置する西沢渓谷は、奥秩父を代表する景勝地です。激しい水の流れが花崗岩を浸食して造り出された渓谷は、自然の手による日本庭園のよう。渓谷にはいくつも滝がかかり、それぞれに異なった趣を見せてくれます。

「渓谷歩き」とはいえ、行程の大半は未舗装の登山道になり、三重ノ滝から先は濡れた岩の上を歩く箇所、急な山道を登る箇所もあります。登山専用の服装・装備が望ましく、行動時間に余裕を持ったスケジュールでお出かけください。

二俣吊り橋を渡り、渓谷道へ向かう

西沢渓谷入口バス停からスタート。樹林が心地よいフラットな道を進むと、ネトリ橋の分岐にたどり着きます。ここで渓谷道と旧森林軌道に分岐するので右側の渓谷道へ。西沢渓谷は危険回避のため、渓谷道を登り、旧森林軌道を下る反時計回りの一方通行になっています。二俣吊橋を渡ると、いよいよ本格的な山道が始まります。

山の斜面につけられた道を進み、三重ノ滝へ。三段に流れ落ちる滝を、滝見台から眺められます。青白い水をたたえた釜と流れ落ちる滝の美しさに圧倒されます。最下段の滝の下は細い廊下状になっていて、水が勢いよく流れ落ち、轟音が響き渡って少し怖いくらいです。

※歩き慣れていない人は三重ノ滝から来た道を戻ることができます。

三段に流れ落ちる姿、水音も迫力の三重ノ滝

三重ノ滝からは、渓谷のすぐそばを歩く箇所が多くなります。濡れた岩の上を歩くような箇所もあり、岩壁に取り付けられたクサリをたよりに慎重に進みます。透き通った清流は木漏れ日を浴びてきらきらと輝いています。

渓谷沿いにはカエル岩やフグ岩など、奇岩がところどころに見られます。看板がついていますが、名前にうなずけるもの、首をかしげてしまうものなどさまざまです。

岩場を歩く箇所にはクサリが設けられている

三重ノ滝から先、いくつも滝が現れます。落差の大きい竜神ノ滝や貞泉ノ滝は迫力がありますし、岩壁を楚々と流れ落ちる恋糸ノ滝は女性的な名称がしっくりきます。釜を持った滝や淵には青白い水がたまっています。

青白い水をたたえた母胎淵

方杖橋を渡り、いよいよ西沢渓谷最大の滝、七ツ釜五段ノ滝へ。落差約30m5段で流れ落ちる滝です。滝の右岸(下流から見て左側)につけられた登山道を登っていきます。登り始めは最下段の滝しか見ることができませんが、登っていくにつれ、釜を持った滝が見えてきます。滝の上部にくると、滝と木々の緑、青空が絶妙のコントラストです。

七ツ釜五段ノ滝の上部、滝を間近に眺められる

七ツ釜五段ノ滝から分かれて木の階段を上り切ると渓谷道の終了点。あずまやがあるので一息ついていきましょう。ここからは旧森林軌道を下ります。ところどころにレールの跡が見られますが、昭和時代に木材の運搬に使われていたトロッコ軌道の跡です。

道沿いにはシャクナゲが多く見られ、初夏には真っ赤な花で彩られます。どんどん下っていくと、途中に大展望台があります。ウッドデッキなどはない広場で、目の前に鶏冠山や木賊山など奥秩父の山が見渡せます。

旧森林軌道を進み、ネトリ大橋で川を渡ると、往路で通過した分岐点に到着。ここからは来た道を戻り、西沢渓谷入口バス停を目指します。

左:旧森林軌道はトロッコのレールの跡が見られる。右:大展望台から木賊山、鶏冠山などを望む

西沢渓谷入口バス停から徒歩5分ほど、国道沿いには「道の駅みとみ」があります。売店では地元の特産品を販売。旬の時季には、ももやぶどうなどフルーツの直売や加工品の販売もしています。食堂では山梨県産の食材を使った料理が味わえます。

直売所や食事処もある道の駅みとみ

【西沢渓谷:山歩きデータ】
アクセス:JR中央本線塩山駅からバス約1時間、西沢渓谷入口下車
コース:西沢渓谷入口…ネトリ橋分岐…三重ノ滝…七ツ釜五段ノ滝…渓谷道終点…大展望台…ネトリ橋分岐…西沢渓谷入口バス停
歩行時間:約3時間50
体力度★★☆ 技術度★★☆

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