ゲストライター 記事

 台湾・宜蘭〜壮麗な自然と風土の味覚を堪能〜 Vol.2

「旅恋どっとこむ」に特別参加させていただきますライターの田喜知です。先日、台湾の宜蘭(イーラン)県に行ってきました。はじめて訪れた宜蘭県には、マイナスイオンたっぷりの森林地帯をはじめ、イルカ&クジラウォッチングを楽しめる海岸エリア、独特の伝統グルメなど数多くの興味深い点がありました。Vol.2Vol.3では、宜蘭県頭城(トウチェン)の沖合にある亀山島(グイシャンダオ)をレポートします。前編となる今回は、島の成りたちや周辺レジャーなどを紹介します。

 


20151205yilan2-1.JPG


 


 

●宜蘭県の守護神「亀山島」

 


台北からバスで1時間あまり、台湾北東部に位置する宜蘭県頭城は、蘭陽平原の自然が広がる風光明媚な場所。町の東端には、太平洋を隔てる海岸線が縦走し、その約10km彼方には県きっての景勝地「亀山島」の姿を望めます。黒潮が横たわる紺碧の洋上に忽然と浮かぶこの島は、総面積わずか2.8㎢ほどの無人島。しかしながら、あまたの緑で覆われた姿にはどこか厳かな雰囲気が漂い、古の時代よりこの地の住人たちに霊島として尊ばれてきたといいます。

 



<巨大なウミガメを連想させる形状は、国内外で注目の的>


 


東西3.3km、南北1.7kmに広がる亀山島は、大小ふたつの起伏と細長く伸びた砂嘴が、それぞれにカメの頭、甲羅、尾を彷彿とさせる独特の地形。その姿は、まるで巨大なウミガメが悠々と大海原を泳いでいるかのようです。この稀に見る個性的な形状から、今春には旅行情報サイト『When On Earth』で、タツノオトシゴ型のイサベラ島(エクアドル)やヘリコプター型のディルマカド島(フィリピン)などと並び、「世界のクールな形の島12」に選ばれています。


http://whenonearth.net/12-cool-naturally-shaped-islands-around-the-world/


 


20151205yilan2-2.jpg


翡翠色の衣を羽織ったような緑豊かな島。朝日を拝むように
頭を東に向け、長い尾を西に伸ばす(撮影:李錕鐘)


 


 


一方、亀山島は、県屈指の景勝地としても名を馳せています。ことに朝靄に煙る姿は美しく、「宜蘭八景」や「亀山島八景」のひとつに数えられるほど。それゆえ、ときに詩人がその神秘を詠い、画家が作品のモチーフにするなど、数々の芸術家たちの感性を掻き立てる源ともなってきました。また、当地出身者ならば誰しも、この島を背景にした思い出のスナップを持っているといい、郷土のシンボルとして数多くの人々から愛されています。

 


20151205yilan2-2-1.JPG


黎明の光に染まる亀山島は幻想的。早起きしてでも眺めたい宜蘭県随一の美観


 



<美観の背景を物語る創世伝説>


 


島の誕生は、約7000年前のこと。ユーラシアプレートとフィリピン海プレートが衝突して起こった4回の火山爆発が起源と考えられています。往時の痕跡を残すように、周辺の海面下には現在10以上の活火山が発見されており、亀山島自体も台湾唯一の火山島として知られています。

 

一方、民間では、その成りたちについて、「亀将軍と竜王の姫君」という創世譚が語り継がれています。


 


〜亀将軍と竜王の姫君〜


昔々、深い海の底に、龍宮城という立派なお城があったそうな。そこには、海の世界を支配する竜王と、王が手塩にかけて育てた娘の竜姫が住んでおった。王には亀将軍という忠実な家来もおって、この亀将軍と竜姫はいつしか惹かれ合うようになり、秘かに愛を育んでおったそうな。ところが、ある日、ふたりの仲を知った竜王は、烈火のごとく怒り狂った。そして、沸き立つ怒りは止まることを知らず、あろうことか、竜王は絶大な魔力を使って亀将軍の姿を亀山島に、娘の竜姫までも蘭陽平原の海岸線に変えてしまったそうな。それ以来、亀将軍と竜姫は離れ離れになり、言葉を交わすことすら叶わなくなってしまった。そして、今も遙か彼方にいる互いの姿を見つめ続け、恋慕の情を募らせているそうな。

20151205yilan2-3.JPG


 

 


何とも切ない悲恋の物語。亀山島の崇高な佇まいも、暁に映える幽玄な情景も、実は亀将軍の武将としての誇りや憂いが醸すものなのでしょうか。また、蘭陽平原は台湾有数の多雨地域。そのことも、竜姫の心情と無縁ではないのかもしれません。


 


 


蘭陽平原から望む亀山島の横顔。
海岸線近くは、蘭陽平原の奥に

控える雪山山脈の湧水が

流れ込み湿地となっている


 


 


 


●周辺レジャーの目玉はドルフィン・ホエールウォッチング 

 


亀山島は眺望の秀逸さに加え、サーフィンなどのマリンスポーツや海鮮グルメの食べ歩きといった周辺レジャーも楽しみのひとつ。なかでも亀山島観光の代名詞となっているのが、「ドルフィン・ホエールウォッチングツアー」です。この周辺は、黒潮の北上ルート。そのため、311月になると、豊富な栄養を求めて大量のイルカやクジラがやってきます。シーズン中には最多で11種類が集まり、群の単位は数頭から100頭以上にも及ぶそう。自然任せのため、出合える数や種類は日により差があるものの、イルカとの遭遇率はおよそ80%を誇るといいます。


 


20151205yilan2-45.JPG


烏石港は、頭城の市街地から約2kmの場所。観光船以外に、数多くの漁船も停泊する漁港


 


ツアーの起点となるのは、頭城市街から約2kmの場所にある烏石港(ウーシーガン)。ここでは10以上の業者が窓口を開き、イルカなどの観賞と亀山島観光を組み合わせたツアーをいくつも催行していますが、最も一般的なのは、イルカやクジラを観賞し、亀山島のビューポイントを船上から見物するコース。クルーザーの大きさは4694人乗りまでさまざまですが、所要23時間(出没場所により前後)、料金は1200元(約4500円、救命胴衣レンタル・保険込み)が目安です。これを参考に、時間や予算などに合わせてコースを決めるといいでしょう。

 


ただし、ツアー用の船や業者は、国の行政院漁業署による認可制。なかには安全性などに問題がある潜りの船もあるので、申し込む際は、国から委託を受けた中華鯨豚協會が発行する「賞鯨標章(ホエールウォッチング証票)」を保有していることを確認しましょう。なお、外国人は当日パスポートの提示も必要です。このほか、島内散策など入島を含んだコースを希望する場合は人数制限があり、事前申請が必要なので注意しましょう。


 


20151205yilan2-678.JPG


ツアーの発着場所は、カラフルなデザインの建物が目印。
乗船は、救命胴衣の使い方の説明を受けてから


 


<バラエティ豊かなイルカ&クジラが集合>


 



出港後は、30分前後で観賞スポットに到着。現地ではイルカたちの出没場所を知らせる船内アナウンスが入り、乗客は「右だ」「今度は左よ」「船のすぐ脇にも!」とその姿を見逃すまいと大興奮です。そんななか、最も目撃率が高いのが「ハシナガイルカ」。このイルカは「海上のバレリーナ」の異名をもち、水面へ勢いよく飛び出したかと思うと、クルッと体をくねらせ美しい弧を描きます。華麗にしてダイナミックなジャンピングスピンは、圧巻のキレのよさ。ひと跳びするたび、甲板中が歓声で大いに沸き立ちます。

 

20151205yilan2-9.jpg


 


20151205yilan2-11-18.JPG


太平洋の大海原を舞台に、水中ショーを繰り広げるハシナガイルカ。見ごとなジャンピングには、思わず拍手!


 


 


一方、クジラは、鎌形の背びれをもつ「オキゴンドウ」の生息数が多いといいます。このクジラは、流線形の洗練されたフォルムをもつハシナガイルカに対し、嘴がなく、ずんぐりと丸みを帯びた頭が特徴。得意技のブリーチングでは、大胆な跳躍を見せた後、脇腹を勢いよく海面に叩きつけて着地します。成長すると体長が56mほどになるため、水飛沫も豪快。また、好奇心旺盛で、ときには船のすぐ脇まで寄ってきたりして愛嬌たっぷりです。しかしながら、鋭い歯をもち、イルカを捕食してしまうワイルドな一面もあるそう。そのため、中国語名は「偽虎鯨(ウェイフージン、「虎鯨」=シャチの意)」、日本でも「シャチモドキ」と呼ばれることがあります。

 

20151205yilan2-19.JPG



鎌のような「く」の字の背びれをもつオキゴンドウ。人懐こく、活動的な性格。動きは俊敏


 


このほか、お腹が白い「ハセイルカ」や斑点模様の「マダライルカ」、超スピードスイマーのクジラ「ユメゴンドウ」などバラエティに富んだ種類を鑑賞できますが、とりわけ生態がユニークなのが「ハナゴンドウ」というクジラです。猪突猛進タイプで、餌となる魚やほかの個体に体当たりしてしまうため、体中がすり傷だらけ。傷跡の様子を喩え、別名を「マツバイルカ」といいます。

 

20151205yilan2-20.JPG


潮風を受けてのクルーズは気分爽快! 乗船客は、イルカたちの出没方向に合わせて甲板を大移動


 



ひと言にイルカやクジラと言っても、種類により外見も性格もさまざま。亀山島周辺では、両者を同時に鑑賞できるうえ、多彩なイルカたちに出合えるチャンスもあります。彼らは数10m先にいたかと思えば、突然、船底間近に現れたりして自由奔放ですが、それだけに船と並走する人懐こい姿や、数10頭、数100頭ものイルカの大群に出合えたときの感動はひとしおです。そして、伝説を秘めた巨大な亀とのコラボレートは、この地ならではの醍醐味。宜蘭らしい思い出を刻むには、最適の体験となるでしょう。


 


次回は、亀山島観光の後編、火山島ならではのビューポイントを中心に紹介します。


 


Information


<台北から烏石港へのアクセス>


・バス


MRT圓山駅から國光客運バスの1877番・烏石港(頭城)行きで約1時間20分、烏石港(烏石港旅客中心)下車。120元、1時間に12


 


・電車


台鉄台北駅から自強号の花蓮または台東行きなどで約1時間〜1時間30分、頭城駅下車(184元、30分〜2時間30分に1本)。國光客運バスの1766番烏石港行きに乗り換え約9分、終点下車。23元、1時間に12本(台鉄頭城駅からバス停「頭城」へは徒歩約5分)


 


<宜蘭亀山島賞鯨旅客服務中心>


http://www.lianwhale.com.tw/index.php


 


<中華鯨豚協會(中華クジラ・イルカ協会)>


http://www.whalewatching.org.tw/


 


<宜蘭県政府「宜蘭軽旅行」>


http://event.suntravel.com.tw/201505_yilan


 


<チャイナ
エアライン>


http://www.china-airlines.com/jp


 

 

 


(取材・執筆/田喜知 久美、写真協力/李錕鐘)