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 ご当地列伝 vol.9 特別公開スタート!震災から蘇る熊本城 復興への道筋をたどる(熊本…

平成28年(2016)4月、最大震度7の前震と本震が熊本県を襲いました。これにより築城の名手・加藤清正による熊本城は大きな被害を受けてしまったのです。敷地の北端の百間石垣から天守付近、さらに南端に近い備前堀石垣に至る広範囲の石垣が崩落しました。また国の重要文化財に指定されている長塀が倒れ、大天守の屋根瓦や鯱が落下するなど、何とも無残な姿は、熊本県民のみならず多くの国民にとっても衝撃的なことでした。私はその年の冬、熊本復興プロジェクト本の製作委員会のメンバーとして、被災した熊本城を目の当たりにし、自然の脅威に圧倒されました。
熊本城の被害額は約634億円とされ、以来、熊本城の復興が熊本を元気にすると、復旧・復元に向けて全力の取り組みが行われています。

復興が進む熊本城

一歩ずつ元の姿へ

二の丸広場から熊本観光ボランティアガイドの黒瀬洋介さんの案内で城の様子を見てみます。震災後、二の丸広場は復興支援でゆずのコンサートをはじめ多くのイベントが行われました。黒瀬さんは「日本人の憐憫の情を強く感じた」と言います。

ボランティアガイドの黒瀬さんとともに

崩れた石垣は、割れたもの、欠けたものはボルトで固定し、すべてにナンバリングをしてそれを組み直すという、途方もない作業を行なうとのこと。ひとつひとつ原形に戻したうえでの復元といいます。

崩れた石垣の石にはひとつひとつ番号がつけられている

戌亥(いぬい)櫓を見ると、石垣が崩れてはいるものの残っています。これは算木(さんぎ)積という強度を増した積み方だったため、隅石が残ったのです。本丸の西北にある宇土(うと)櫓は昭和2年に補強修理がされたため、続櫓部分に被害があったものの第三の天守とも呼ばれるその姿を留めています。

美しい姿を留める宇土櫓

また、現在立ち入り制限区域にある飯田丸五階櫓。黒瀬さんは前震直後と、本震直後の写真を撮影されていました。二つの写真を比べてみると前震後はそれほどの被害には思えませんが、本震後は、石垣が無残に崩れています。隅石だけで櫓を支えていることから、奇跡の一本石垣などと呼ばれています。

飯田丸五階櫓。上が前震後、下が本震後

さらに天守を見上げると、大天守には新しい鯱が輝き、約790個の石垣が積み直され、1階部分も見えます。「熊本城はその復興の過程、工事のプロセスも観光として活かそうという取り組みをしています。見てください、小天守の工事用の幕がシースルーで、その様子を外から見ることができるんですよ」と黒瀬さん。確かに、足場が組まれた修復中の小天守の様子がよくわかります。もう少し近づいてみましょう。加藤清正を祀る加藤神社からは力強く復興へ進む天守がしっかりとみて取れ、熊本城に声援を送りたくなります。

大天守には鯱が載ります

10月5日から特別公開スタート

多くの方々の尽力により、なんと10月5日から熊本城の特別公開の第一弾が始まりました!原則、日曜・祝日限定ですが、二の丸広場の西大手門から入り、工事用スロープを歩き、宇土櫓がある平左衛門丸と天守前広場に行くことができます。天守の内部には入れませんが、ここから見上げる天守の姿は、3年半ぶりとなるのです。どんどん復旧が進んでいる!ことを実感できるルートです。来春にはさらに特別見学通路も完成するとのこと。何ともうれしい限りです。

城彩苑わくわく座で城を俯瞰しよう

熊本城の桜の馬場に位置する「城彩苑」は熊本城の歴史と今を体感できる「熊本城ミュージアムわくわく座」と、熊本の食やお土産が楽しめる「桜の小路」23店舗から成ります。

わくわく座

わくわく座にある「熊本城被災・復旧プロジェクションマッピング」では、熊本城の模型に音や映像を合わせて櫓の倒壊や被災状況などが再現され、迫力満点。城の全体像を見ることができます。また城内の定点ライブカメラや、スケール感が半端ない熊本城VR(バーチャルリアリティ)など、城の全貌と復旧のストーリーをたどることができます。

プロジェクションマッピングで震災の様子が分かります


現在立ち入りができない箇所もVRで

特別公開に合わせて、熊本城調査研究センターとのコラボ企画「よみがえれ!熊本城プロジェクト」が開かれ、パネル展示を中心に復旧に携わる人や工事の手順なども紹介。その技術の高さや地道な作業を知ることで、この城の復興にかける熱い思いを感じることができるでしょう。
また、わくわく座では時代衣装を着ることができる体験や、役者と映像が融合する寸劇、人形劇映像などもあり、大人から子どもまで楽しめる施設。ぜひ立ち寄ってみてください。

特別展のパネル展示


解体調査成果も

被災した熊本城の復旧費用に充てる「復興城主」制度をご存じでしょうか。なんと寄付金額が20億円を突破したそうです。この制度は、1万円以上の寄付で「城主手形」と「城主証」が発行され、わくわく座2階のデジタル芳名板に登録される制度です(詳しくは熊本城HP)。日本だけでなく海外からも多くのお城ファンが熊本城の復興を後押ししています。九州観光の折には、どんどん元気になる熊本城に会いに来てください。

熊本城 特別公開
開:9:00~17:00
料:大人500円/子ども(小中学生)200円

熊本城ミュージアムわくわく座
営:9:00〜17:30(わくわく座入館は17:00まで)
休: なし
料:大人300円 / 子ども(小中学生)100円
熊本城との共通入園券:大人600円/子ども(小中学生)200円

取材・文/関屋淳子 撮影/山本厚子