今日も古墳日和 by 多田みのり

生命の島、屋久島へ

 

屋久島は鹿児島県佐多岬から南南西約70Kmに位置する、面積約505平方Kmの島。ユネスコ世界自然遺産に登録されており、人口は約13600人。ほぼ円形で、車だと2時間半ぐらいで1周することができます。夏から秋に掛けて、屋久島旅行を計画されている方も多いのではないでしょうか。今回は、豊かな緑と水に満ちた屋久島をご紹介します。
20140820yaku02.JPG ●独特の地形や気候を楽しもう!

20140820yaku21.JPG 屋久島の魅力のひとつが、登山やトレッキングでしょう。周囲132kmの島には山の数が66、そのうち1800mを超える山が8座もあり、宮之浦岳(1936m)は九州の最高峰でもあります。そして、海抜0mから1936mまでの標高差があることにより亜熱帯から亜寒帯までの気候が同居し、これは九州から北海道の気候が一つの島にあることを指します。それゆえ、屋久島には日本が凝縮しているといわれているのです。またその特異な地形から「洋上アルプス」と呼ばれることも。ともかく島を訪れたなら、独特の気候・風土・景観をぜひ体感してみてください。

 そして島の90%を占める森には、年間降水量約4000mmの雨が降り、「1ヶ月に35日雨が降る」「毎日島のどこかで雨が降っている」といわれています。実際、島を一周してみると東側は晴れていたのに、西側は雨だったというようなことが数度ありました。その雨が多くの植物種を育んでいて、日本の植物種の7割以上、約1500種が生息しています。しかもそのうち約40種が固有種といいますから、まさに東洋のガラパゴス!恵みの雨によって多くの植物が命を繋ぎ、緑あふれる島となっているんです。旅行なのに雨が降ると残念な気分になるものですが、屋久島だと不思議と雨も魅力に感じます。

 屋久島観光というと縄文杉というイメージが強く、世界遺産登録以降、特に大勢の観光客が詰めかけるようになりました。観光客の一点集中化が進んでおり、森が傷んだり事故が急増しています。山岳部への過剰な車両の乗り入れも問題となり、現在は31日〜1130日(平成26年の場合)の期間中は一般車両の乗り入れを規制し、荒川登山バス・貸切バス・タクシーのいずれかを利用して、荒川登山口に行くことになっています。

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縄文杉へは、延々と続くトロッコ軌道を歩いたあと、木道や階段を登ります。

堂々たる姿に逢えた時は感動ひとしおですが、足腰膝の弱い方にはオススメできません。

 私が2005年に縄文杉登山を楽しんだ時もすごい人出で、その頃は規制がなかったので、朝500で登山口は大渋滞&大混雑!このまま車を停められず、山へも登れないのではと不安になりました。みんなが安全に速やかに出発し、自然に優しい登山バスは、とても有効だと思います。そもそも縄文杉登山は往復8時間ほどかかる健脚向けのコース。縄文杉以外にも、素晴らしい屋久杉に出逢える場所はたくさんあります。ぜひ自分の体力にあわせて目的地を選び、事故の無い楽しい旅を楽しんでください。

 屋久杉と島の自然に触れられるオススメスポットは、白谷雲水峡とヤクスギランド。いずれもトレッキングシューズやレインウェアなどの装備は用意した方が良いですが、入り口まで車でアクセスでき、23時間の散策で樹齢2000年クラスの屋久杉に直接触れることができます。

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白谷雲水峡は『もののけ姫』の森のモデルとして一躍有名に。幻想的な雰囲気です。

切り株の上に苔がはえ、そこに屋久杉の種子が落下して発芽し、切り株の上で成木になる

屋久島ならではの現象「切株更新」も見られます。こうして成長した木を二代杉とよび、

なかには三代杉もあります。生命力をダイレクトに感じることができる森です。

沢を渡るところがあるので、増水時は要注意(場合によっては通行不可)です。

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江戸時代に伐採された森を利用した、銘木がいっぱいのヤクスギランド。

30分、50分、80分、150分のコースがあり、体力にあわせて森をめぐることができます。

上左の仏陀杉は推定樹齢1800年、上右の母子杉はともに推定樹齢2000年を超えています。

吊り橋のたもとから沢に降りることもでき、水遊びもできます。

個人的に、入り口にある屋久杉を利用した電話ボックスが非常に気に入りました(笑)。まだあるかなー?

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ヤクスギランドから車で20分ほどの車道沿いにある紀元杉。

推定樹齢3000年の古木を、車から降りてすぐに見ることができます。

屋久島名物の海の幸を味わおう!

 

 ひとつめは「首折れサバ」。屋久サバと呼ばれていますが、屋久島近海で捕れるゴマサバのこと。「サバの生き腐れ」というほど傷みが早いサバですが、捕れたらすぐに首を折って血抜きをすることから鮮度が保たれ、島ではお刺身で食べられます。歯ごたえがありプリプリしていて、とっても美味。しゃぶしゃぶやすき焼きでも味わえ、絶対食べたい逸品です。

 もうひとつはトビウオ。漁獲量日本一で、島に向かう高速船からも、並ぶように飛んでいるのが見えます。こちらはお刺身はもち
ろん、つけあげ(琉球料理のチキアーギが訛ったといわれる、さつま揚げのようなもの)やつみれが定番です。胸びれを広げたままの姿揚げもダイナミックで人
気ですし、ラーメンやうどんも出汁が出ておいしいです。トビウオの出汁というと「?」でも、「あごだし」といえば、ピンとくる方も多いのでは? 我が家も
煮物の時に使っていますが、実に良い出汁がでます。

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島の味覚にはぜひ島焼酎「三岳」をあわせて!でも二日酔いでの森歩きは危険ですよ(笑)!

プリプリのお刺身はどれを食べても美味。味わいもさることながら、新鮮そのものの歯応えに感動しました。

フルーツガーデンは8名で訪ねたので、こんな豪華に!どれも美味しかった!

 他にも、ポンカン・タンカン・パッションフルーツ・マンゴー等のフルーツや、屋久とろと呼ばれる山芋等が特産品として知られています。フルーツは、島の南側にある、屋久島フルーツガーデンを訪ねると、なっている様子を見たり、試食をしたりすることができます。

 

●森や川に抱かれて遊ぼう!

 

 島のほとんどは山ですが、もちろん人が住み、農作物を育てている里もあります。そして、山に降り注いだ雨が急峻な山を下り、滝を作り、海に流れ込みます。石灰岩でできている島なので、水は透明度を保ったまま海へ...。それゆえ、屋久島は海も美しいんです。珊瑚礁があり魚の種類も豊富で、複雑に入り組んだ入り江では伊勢エビも捕れます。そしてウミガメの産卵地も。植物だけでなく、様々な水の生き物も屋久島は育んでいます。

 世界遺産エリアで、山には入らずともその自然を感じられるのが、島の西側にある西部林道。「ヒト2万、シカ2万、サル2万」という屋久島に伝わる言葉通り、道路に屋久シカと屋久サルがあちこちにおり、時折通る車と同じくらいの頻度で出会います。

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左はウミガメの産卵地・永田浜。産卵期には、産卵の様子を見るガイドツアーが催行されており、

苦しそうなウミガメの息づかいが聞こえるほど間近に、感動的な瞬間を見ることができます。

屋久シカと屋久サルには、くれごれも餌付けしないように注意しましょう。

 私は以前、ツアーに参加してガイドさんと共にこの道をマウンテンバイクで走りました。自然の音や匂いを感じながらのサイクリングは爽快そのもの。道路脇の清水で喉を潤したりもでき、鹿や猿の脇をサーッと走り抜けることもしょっちゅう。ちょっとしたサファリツアー気分です。

 林道脇から川沿いの森へ入って行くと、巨岩を抱き込むように生えるガジュマルの巨大木が現れます。垂れ下がる根っこに捕まり登ってみると、ターザン気分♪ 視点も変わり森の表情が違って見えました。ツアーでは沢登りにも挑戦! 台風後の増水した川は迫力があり、緑と水を満喫するひとときは、心からデトックス&リフレッシュできました。ぜひガイドツアーを利用して、屋久島を学びながら楽しんでみてくださいね。

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※西部林道ツアー:私が利用したのは、Earthly
Company
さん。救助犬の「かり」も一緒にツアーをめぐり、イヌ好きの私はなおさら癒されました。

 

そのほか、温泉めぐりや滝めぐりなど、のんびり観光もおすすめ。集落の中をぶらぶらと散策しながら、島の文化を学ぶのも良いでしょう。無理せず体力にあわせて、知識も装備もしっかり準備して出掛けてみてください。

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上は磯に自然に湧き出した、平内海中温泉。干潮時の前後2時間ほどしか入浴できない

激レア温泉です。男女混浴、脱衣所無しのなかなかワイルドな温泉ゆえ、一度入って

みたいもののまだトライできていません。島にはほかに6ヶ所温泉があります。

下左は千尋の滝。250m×300mの巨大な花崗岩の岩盤に豊かな水が流れ落ちる様が見事。

下右は大川の滝。落差88mで滝壺の前まで行くことができ、迫力満点。マイナスイオンもたっぷりです。

 

【お知らせ】

一人旅やバックパッカーに絶大な人気を誇る、宮之浦の素泊まり民宿「晴耕雨読」。こちらのご主人・長井三郎さんが屋久島の暮らしと島への想いを綴ったエッセイ集を出されました。ガイドブックには載らない、長井さんだからこそ知る屋久島がたくさん紹介されています。ぜひ島へ行く前に、読んでみてはいかがでしょうか?

屋久島発、晴耕雨読』(新泉社)

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誰とでもすぐに仲良くなれちゃう「晴耕雨読」。離れもあり、グループ旅行でもOK。

夕食をみんなで作ったり、酒盛りで意気投合して翌日一緒に山登りしたり...。

島の様々な情報も手に入る、活気ある宿です。


【アクセス】

鹿児島空港から屋久島空港行き飛行機で30分。船だと、鹿児島本港から高速船で2〜3時間、フェリーで4時間。

 

(取材・執筆/多田みのり 写真は2005年と2007年の屋久島訪問時のもの)

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