今日も古墳日和 by 多田みのり

「天地人」の舞台・南魚沼を散策

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NHK大河ドラマ「天地人」。みなさんご覧になっていますか?

「愛」の一文字を兜に掲げ、義の精神で生涯ただ一人の主君・上杉景勝に仕えた直江兼続。揺るぎのない生き様が共感を得tada-uonuma2.jpgているようですね。
その直江兼続と上杉景勝の生誕地である南魚沼市では「愛・天地人博」が開催されており、多くの観光客で賑わっています。根っからの歴女である私も、これを機に兼続ゆかりの地を訪ねてきました。
※歴女...歴史および歴史上の人物好き(主に戦国時代や戦国武将)の女性のこと。多田の本来の専門は古代なのですが、流行りの歴女ブームに乗ってみました。
上越新幹線越後湯沢駅から、「天地人」仕様にラッピングされた上越線に乗り換えて約20分、六日町駅で下車します。駅からは兼続と景勝が生まれた坂戸城を望むことができ、旅人を出迎えてくれます。
 
愛・天地人博 南魚沼
tada-uonuma3.jpgまず向かったのは、
六日町駅から歩いてすぐの「愛・天地人博 南魚沼」会場。大河ドラマ「天地人」の紹介パネル、使用した道具や衣装、ロケ地の再現やメイキング映像の展示や、甲冑着用体験や坂戸城のジオラマ、南魚沼の自然と文化を紹介するシアターなどがあり、ドラマファンならずとも兼続が生きた時代を感じることができます。入場者には南魚沼産コシヒカリ1合がプレゼントされるのもうれしいですね。
おすすめは甲冑着用体験。自分のカメラで撮影もしてくれるので、記念にもぴったり。ポロシャツのお父さんが、甲冑を身につけた途端に勇ましい武将に変身。女性ももちろん体験できます。
地酒の販売や天地人グッズ、越後の特産品や限定お菓子の物販ゾーンもあるので、お土産選びにも最適です。私は南魚沼の地酒を購入。すっきりとした口当たりなのに後味まろやかで美味しかったですよ!


●景勝・兼続レリーフ

tada-uonuma4.jpg「愛・ 天地人博 南魚沼」会場に隣接する南魚沼市役所前にある、景勝・兼続のレリーフ。今も景勝の横に、愛の兜を手にした兼続が仕えています。背が高く美男子で、弁舌爽やかな知勇兼備の武将だったという兼続ですが、レリーフのお顔も男らしくてステキです。秀吉が「天下の治政を任じ得る人物」と兼続の人品を絶賛しただけの、人柄が感じられました。
 

●お六の湯(足湯)
tada-uonuma5.jpg六日町大橋のたもとに六日町温泉の足湯を見つけたので、ちょっと休憩。目の前の清流・魚野川と坂戸城が築かれた坂戸山を望みながら、ゆっくりと足湯を楽し めます。東屋風になっていてテーブルが付いているので、地図をひろげたりガイドブックを読んだりと、なかなか便利な足湯です。泉質は弱アルカリ性単純温 泉。柔らかいお湯に疲れがほぐれていきます。足湯は足に溜まった老廃物を流し、全身の血行を良くしてくれるので、全身浴と同じぐらいの効果が得られます。 20分ほどの入浴で、足が軽くなりますよ。
 
 

●お発ち飯(おたちめし)のランチ
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ランチは六日町温泉にある「旬彩の庄 ホテル坂戸城」へ。市内のレストランや旅館で味わえる「お発ち飯」を一度味わいたくて、前々から楽しみにしていたのです。お発ち飯とは上杉家の陣中料理のこと。上杉謙信は戦の前になると、陣中で大釜に米を炊き、酒樽と山海の珍味を用意して将兵にふるまい、士気を高めたと言われています。この慣習にならって現代版にアレンジしたのが「越後 お発ち飯」。越後産の食材を用いて、戦国時代を思わせる趣向を凝らして提供しており、加盟店それぞれに個性があって、どれをいただくか迷ってしまいます。
ホテル坂戸城のお発ち飯は、1合5勺の大きな握り飯と、越後もち豚・佐渡いか・県内産鮭の味噌漬けの炙り焼が特徴。南魚沼産のコシヒカリは、ホテルの玄関前に据えられた釜で炊かれています。籾殻で炊くぬか釜のご飯は、ツヤがあって甘みがあってもっちり。もちろんおこげもちゃんとできます。塩をつけずにご飯だけをぎゅーっと握った握り飯は、お米のおいしさを再確認でき、それだけでご馳走です。

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ほかにも地元の素材を使って地元のお母さん達が作ったローカルなおかずの数々が並びます。これがまた素材の味がしっかりと活きていて、素朴なんだけど美味しいんですね〜。また、兼続の朝食のおかずは山椒の実3粒だけだったという言い伝えに因み、山椒の実も添えられています。ピリッとした刺激が甘みのあるご飯と合い、もりもりと握り飯にかぶりつく私。薬味の自家製味噌とかんずり(※)をご飯にぬり、炙って食べるとこれまた美味。気が付けばペロリと1合以上食 べていました。まだまだ食べたいのだけど、これ以上は女子としてまずかろう(笑)と思い、残りの握り飯は竹の皮に包んでお持ち帰りに。この竹の皮の演出も風情があっていいんですよね。
ホテル坂戸城では昼食だけの利用の他、入浴付きのセットもあります。南魚沼産をたっぷり味わった後は、ゆっくりお湯を楽しんでみては?
※かんずり...唐辛子を雪の上に晒し、麹・塩・柚子などを加えて発酵させた唐辛子味噌。上杉軍は雪中行軍の際にこれを手足に塗り、凍傷予防に用いたそうです。


●坂戸城

景勝と兼続の生誕地である坂戸城は、戦国時代には一度も落城することなく、難攻不落の山城として知られていました。成立年代は明らかではな いですが、景勝の祖父・長尾房長が16世紀のはじめに本格的な築城を行い、上田長尾の本拠地となります。その後景勝の父・政景が亡くなると、景勝は謙信の養子となり春日山城に入ることになり、坂戸城は春日山城の支城に。16世紀末に上杉家が会津へ国替えになった後は堀直寄が入城しますが、その後堀家の内紛 により坂戸城は没収、廃城となりました。
tada-uonuma9.jpg現在の坂戸城は、山麓の杉林の中に城主の館や家臣の屋敷の跡が残り、景勝・兼続の生誕之地の石碑が建てられています。また坂戸山(634m)を登っていく と、山頂には本丸である実城(みじょう)一帯に堅固な石垣などの山城遺構が残っています。山頂までは1時間30分ほどの登山コースになっていますが、本来 は城を攻めているわけで、要害であることを実感できるそうです。私は時間がなかったので、山麓の館跡や石垣を見学しました。景勝の母・仙洞院に利発さを認 められた兼続は、6歳で景勝の小姓となります。この地で生涯の主従の絆が育まれたのかと思うと、感慨深いものがありました。
坂戸城
六日町駅から徒歩20分。
 
●雲洞庵(うんとうあん)

「雲洞庵の土踏んだか」で有名な越後一の名刹・雲洞庵は、奈良時代に創建されたのち、室町時代に関東管領上杉憲実により曹洞宗寺院として再興され、上杉家の菩提寺として発展しました。景勝と兼続も幼い頃、ここで四書五経をはじめ中国の古典などを共に学んだといいます。
tada-uonuma11.jpg赤門をくぐると杉木立が並ぶ80mの参道が出迎えてくれます。ドラマの影響で平日にもかかわらず多くの人で賑わっていましたが、杉木立が音を吸収してくれるのか、ひんやりと静かなお寺の空気が満ち、心が落ち着いていきます。
この参道の石畳の下には一石一字ずつ法華経が刻まれた石が敷きつめられており、かつて一年に一度赤門が開放された時に、参詣者がそのありがたさに「雲洞庵の土踏んだか」と言い合ったと言われています。また、修行僧の間では曹洞宗の雲洞庵と、同じ南魚沼市上野にある臨済宗の関興寺の二代道場で禅を学ばなけれ ば、一人前の禅僧とはいえないと言われていたことから、修行僧同士が「雲洞庵の土踏んだか」さらに「関興寺の味噌なめたか」と言い合ったとされています。 いずれにしても南魚沼に来たなら、ぜひとも雲洞庵の土を踏むべきでしょう。
十四間×十間の堂々たる本堂などの建築美も見事ですし、宝物殿には上杉謙信や武田信玄など多くの武将が帰依したことを裏付ける資料が展示されています。名僧や一流の知識人が集ったという雲洞庵で、景勝と兼続は愛と義を学んだのですね。

●塩沢紬機織体験
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越後の伝統的な織物として、越後上布があります。その歴史は古く、奈良・東大寺正倉院には1200年以上前に織られた越布(麻布)が収めら れているほど。現在は生産量が減少している原料の苧麻(ちょま:からむし)ですが、昔はたくさん自生しており、それをごく自然に織物に利用してきたそうで す。さらにもっと良いものを、と上杉家が財源として奨励したため、生産量も品質も向上していきました。しかし、上杉家が会津へ移る時に職人も会津へと連れて行ったため、生産量は右肩下がりに。そこでこの技術を絹に転用することで生まれたのが、塩沢紬・本塩沢・夏塩沢です。さらりとしたシャリ感のある塩沢は、私の好きな織物の一つです。
ちなみに、上杉家はさらに米沢に移る際にも職人を同行し、米沢の紅花紬が生まれます。上杉に上質の布あり、ですね。
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さて、この塩沢紬の機織り体験ができると聞いて訪ねたのが、塩沢駅から歩いて2分ほどのところにある「塩沢つむぎ記念館」。1階は日本各地の伝統的な織物 産地の紹介や商品の展示販売スペース。2階に体験コーナーがあります。織機が5台並んでおり、縦糸はすでにセットされているので好みの模様の台を選び、さらに好きな色の横糸を選んで体験します。私は5番の織機にして、横糸は大好きな緑系で統一。まずインストラクターさんの実演と説明を受けてから、いよいよチャレンジ。足で踏み板を交互に踏み換えることで縦糸が交差するので、その間にヒという器具にはめ込まれた横糸を通し、オサを打ち込みます。 最初はぎこちなかったのですが、慣れてくると目の前でどんどん布が生み出されていく様子は魔法のように感じます。約40分ほど掛けて、15センチほど織ることができました。小物を置く敷物にしたいなぁと思っています。市販する塩沢紬の糸を使って体験できるので、品質は折紙付き。お土産にできる織物体験。オススメです!
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南魚沼の歴史と食と湯と文化に触れる旅は、いかがでしたでしょうか?心と体を休めるだけでなく、少しだけ知的な文化体験を織り込んだ旅も気持ちを豊かにしてくれます。ぜひお出かけになってみてくださいね!  
観光のお問い合わせは「南魚沼市観光協会」へ。 

(取材・執筆 多田みのり)

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